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田川市病院事業 齋藤 貴生 管理者

田川市病院事業 齋藤 貴生 管理者

マーケティング論を生かして病院再生を確かなものに

【さいとう・たかお】 1964 九州大学医学部卒業 1970 同大学大学院医学研究科修了 1976 米フレッド・ハッチソン癌研究所留学 1995 九州がんセンター臨床研究部部長 2006 大分県病院事業管理者 2010 田川市病院事業管理者 九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座特別教員

 負債額が膨らみ、危機的状態にあった田川市立病院の再生に取り組み始めてから8年。2014年には黒字化に成功した。2017年にはコトラーのマーケティング論を導入し、「再生」を確たるものにしていく。

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―就任した経緯と、これまでの取り組みについて聞かせてください。

 田川市から依頼があったのは2010年。当時、この病院は事実上の経営破綻状態でした。

 私は大分県病院事業管理者として4年間で50億円の収支改善を実現するなど、各地で病院の経営を立て直してきました。自分の培ってきた経営の理論が、田川市立病院でも通用するのか挑戦したいと思い、仕事を引き受けることにしました。

 着任後、基本理念を定め、外部と内部の課題抽出と中期事業計画の策定に取り組み、その計画にそった戦略的な経営に取り組みました。結果、2014年度から2016年度にかけて、3年連続で経常収支は黒字。しかし2017年度、診療報酬稼働額が予算額よりも減少し、再び赤字になると予測されたのです。

 詳しい調査をすると、2012年以降、ここ田川医療圏の患者さんが隣接する飯塚医療圏内の3次医療機関へ流出していることが判明しました。流出数は数年にわたって上昇していたのですが、緩やかな変化で気がつかなかった。他の医療圏で治療を受ける患者さんの数は2017年度に最大になると予測されました。

―危機を脱するための方法としてどのような手を。

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 急遽「特別事業計画」を策定。当初2018年4月から開始する予定だったホリスティック・マーケティングも前倒し、同1月に始めました。

 「ホリスティック・マーケティング」は、フィリップ・コトラーのマーケティング論3.0の「地域の潜在的なニーズやウォンツを把握し、それらを満たす価値を創造し提供するため組織全体で包括的(ホリスティック)に取り組むこと」です。

 この定義を病院に置き換えると、21世紀型の病院経営は「地域の人が持つ医療へのニーズを理解し、そのニーズを満たす価値を提供する」「ソーシャル・メディアを活用し、広く伝達して周知する」と読み解くことができると思います。

 そこで私はまず、田川地域の医師側のニーズを把握するため、当院に所属している病院長や副院長を含む全15診療科の医師全員に田川医療圏にある59医療機関を訪問してもらい、その後全医師と面談しました。「患者数の減少」についてや「各診療科の実情」「病院に対する評価」など、一人ひとりの考えを聞いたのです。

 さらに、今年6月には田川市内、田川郡内の住民の医療ニーズを調べるため、来院した患者さんにアンケート調査を実施しました。現在、回答を精査、分析しています。この結果から必要な医療やサービスが見えてくるはずです。

 2017年の10月〜12月と、特別事業計画を実行してからの今年1月〜3月の新規入院患者数、(入院+外来)、医業収支比率を比べると、全数値が上昇。懸念された2017年度は黒字になる見通しです。

 圏内の医療機関を訪問したことで、当院への紹介患者数が増え、他圏域への流出を防げたのです。これからはアンケートで得られたニーズの部分を強化していきます。

 これまでの日本の医師に対する教育では、「医学」は教えていましたが、「経営学」には触れてきませんでした。そこで2012年に九州大学大学院の馬場園明教授(医療経営学)らと共同で「病院経営の質向上研究会」を立ち上げました。

 日本にはまだ、経営学の理論を病院運営に取り入れている医療機関は少ない。研究会は数少ない勉強のチャンスです。興味があれば学生でも若手医師でも参加できます。経営の改革は、難しいことではありません。院内の問題や無駄に対する解決策を考える。その繰り返しが健全な経営につながっていくのです。

田川市立病院
福岡県田川市糒1700-2
TEL:0947-44-2100(代表)
http://hospital.city.tagawa.fukuoka.jp/

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