急性期病院と在宅から もっと患者を受け入れる
福岡県・みやこ町で50年近く、主に慢性期の患者の診療を担ってきた京都病院。昨年には地域包括ケア病床を開設。今年4月には新院長が就任し、急性期病院からの患者受け入れを積極的に推し進めている。
―急性期病院からの着任。理由は。
当院に移るまでは、大分県立病院や飯塚病院など高度急性期、急性期を担う病院に勤務し、循環器内科医として、急性心筋梗塞などを診てきました。
急性期病院のスピード感も良いけれど、違う環境での医療も知りたい―。そんなことを考えていたとき、勤務していた飯塚病院院長の増本陽秀先生から「京都病院の後継者をさがしている」と聞いたのです。
京都病院には飯塚病院の医師が週に1度当直に来ていました。その先生方からの評判もよかった。「患者さんに元の生活に戻ってもらうという目的意識をしっかりと持って仕事をしているスタッフが多い」と。その言葉たちも、決断を後押ししてくれましたね。
―京都病院で取り組んでいることは。
私が赴任する前年の2017年、地域包括ケア病床40床を開設しました。在宅復帰を前提に、患者さんに手厚いリハビリなどを実施し、サポートする病棟です。
現在は、主に京築地区や筑豊地区の病院での急性期治療が終わった方が入院。60日以内の在宅復帰を目指して、一人ひとりに合わせた治療を提供しています。
中には急性期病院での治療がほぼ終わったものの「炎症が落ち着いていない」「熱がある」「肺うっ血が残っている」といった不安要素のある患者さんもいらしゃいます。そういった方も積極的に受け入れるよう心掛け、早期回復に向けて治療を行っています。
今年8月には地域一般病床18床もスタートさせました。背景にあったのは、在宅療養する患者さんの状態が悪化したときの入院先を確保しなければならないという思い。開業医の先生方からも「患者の状態が悪くなった時、在宅復帰前提の地域包括ケア病床で良いのか、医療療養病床での長期入院が必要なのか、判断が難しい」「一般病床があったほうが紹介しやすい」といった声が上がっていました。
従来の2病床に、地域一般病床が加わったことで、患者さんを療養病床で長期的に診るか、退院を目指した地域包括ケア病床に移行するかを振り分ける役割を担えるようになりました。
―他に力を入れている治療はありますか。
言語聴覚士による嚥下(えんげ)指導です。嚥下造影検査によって、患者さん一人ひとりの飲み込みなどの機能を評価。その値に合わせたリハビリの計画を立てています。
栄養摂取の手段は食事以外にもありますが、訓練して、たとえ一口であっても自分の口から食べることができると、それによって将来への希望がわく。治療へのモチベーションも大きく変わってきます。
嚥下困難に気付くのが遅れると、栄養低下、誤嚥性肺炎の発生など、さまざまな問題が起こり、治療にも時間がかかります。嚥下障害に気付いていない方にも嚥下外来に来ていただくために、地域連携室のスタッフや事務部と共に地域を回って、早期受診の重要性などを訴えています。
―今後の展望を。
急性期病床がいっぱいになり、患者の転院先もなかなか見つからず、救急などで運ばれてくる患者の受け入れに四苦八苦する…。これまで私は、そんな状況を実際に経験してきました。
だからこそ、この病院では設備とスタッフを充実させ、近くの急性期病院との協力体制を整えていきたいと考えています。それと同時に地域の方からは、「京都病院にかかれば、適切な治療とリハビリによって短期間で在宅に復帰できる」と認識してもらえる病院になっていきたいと思います。
医療法人博愛会 京都病院
福岡県京都郡みやこ町勝山箕田298
TEL:0930-32-2711
http://www.miyako-hp.or.jp/