“つながり”大事に 超急性期の後を支える
熊本県・人吉に四つの医療施設を構える医療法人「蘇春堂」。異なる役割の4施設を取りまとめる、小堀祥三統括院長に話を聞いた。
―蘇春堂グループと、「統括院長」の仕事について教えてください。
当グループは一般診療と二次救急を中心とする「球磨病院」、介護・医療療養病棟を持ち、透析センターなども擁する「人吉中央温泉病院」、精神・神経疾患に特化した「光生病院」、球磨村唯一の医療機関として内科、外科、小児科、訪問診療や看取(みと)りにも取り組む「球磨村診療所」の4施設から成り立っています。
それぞれの医療機関の状況を把握して、アドバイスをするのが統括院長の役割です。2カ月に1度、全院長が集まる「院長会」を開き、各病院の現状や問題点などを共有。そこで議題になったケースに対して、4病院が個別に、もしくは連携して、どう対応できるかを考えます。
また、毎日、全施設の日報をチェックするほか、患者さんの診療録にも目を通しています。必要な検査や治療に漏れがないか、診療報酬の請求に問題はないか。疑問に思った記録があれば担当医に確認しています。
―4施設の連携はどのようにしているのでしょうか。
それぞれの病院の医師や看護師が相談して治療計画を立てています。
球磨病院と人吉中央温泉病院は道路を挟んで隣り合っています。人吉中央温泉病院に入院している患者さんが球磨病院の外来で診察を受けることもあるし、転院することもある。グループ内で患者さんを紹介すると、それまでの経過や病状以外のことまで伝えやすいので、情報の伝達がスムーズに進みます。
特に、グループ内に精神科病院があることが他の法人との大きな違いです。法人内での転勤もあるため、急性期、慢性期、精神科の病院それぞれで、異なる経験を積むことができます。
―最近のトピックは。
介護療養病床の廃止が決まり、現在、人吉中央温泉病院の介護療養病棟に長期間入院されている患者さんとご家族には、個別に説明する機会を設けました。その際、介護療養病床で過ごす方々と接する中で、「誰もが退院を望んでいる訳ではない」と知ったのです。
家族が遠方に住んでいて、自宅に帰っても世話をしてくれる人がいない、パートナーに介護の負担を掛けてしまうのが心苦しい…。不安を抱えている患者さんが多くいらっしゃいました。
そのような方たちに家族構成や家屋の状況、希望などを丁寧にヒアリングし、感じている不安を把握して、退院後の治療や訪問リハビリにつなげていくことが必要だと思っています。
現在、日本では認知症の人が増え続けています。そのニーズに応えるため光生病院を増築しました。全体の病床数206床は維持したまま、認知症治療病床を55床から100床に増やしています。
さらにスタッフも増員しました。ご自宅での対処が困難になった患者さんを受け入れ、認知症の専門的なケアで症状の緩和を目指します。また、生活機能回復訓練にも注力しています。
―蘇春堂が目指す、地域医療での立ち位置とは。
急性期の治療が終わった患者さんの受け皿でありたいですね。三次救急、高度急性期・急性期医療を担う「人吉医療センター」と連携し、患者さんを受け入れ、社会復帰するお手伝いをしていきます。
もう一つ、社会復帰の面で取り組んでいるのが、アルコール依存症を克服し、退院した患者を集めた「アルコールミーティング」の開催です。断酒の決意を声に出して発表し、結果を共有することで仲間意識が高まり、再入院率が下がりました。
現在は、「熊本県版糖尿病療養指導士(CDE-K)」の資格取得を地域の医療従事者に呼びかけています。蘇春堂グループ一丸となって、地域医療のレベルアップに貢献していきたいですね。
医療法人蘇春堂 球磨病院
熊本県人吉市上青井町176
TEL:0966-22-3121
http://www.soshundo.jp/