長い歴史と実績をもとに地域と患者の思いに応えたい
1952年の創立以来、市中病院として地域の中核的な役割を果たす福岡赤十字病院。腎臓内科では「CKD保存期外来」を設け、積極的に地域医療に貢献している。今回は、在宅を含めた今後の透析治療について、腎臓内科の満生浩司部長に話を聞いた。
生活習慣になじむ透析の大切さ
―腎疾患の医療施設として在宅透析への考えは。
当院は、腎疾患医療を担う市中病院としては中核に位置し、腎臓内科医の数も多い。治療に難渋される腎疾患の方も多くお越しになります。
常時、多数の透析患者さんが入院しており、腎臓内科以外の診療科の医師や看護師も透析患者の診療に十分慣れていて、ごく日常的に対応することができる。これがこの病院の実績であり、特徴です。
現在、血液透析のベッドは53あります。たくさんの合併症の患者を請け負う「センター」としての役割もありますから、施設での透析は大事な医療です。
しかし、それはそれで維持しながら、透析医療については、今後”在宅”に持っていく努力が必要だと思いますね。
―在宅透析の具体的な方法としては、どんなものがあるのでしょうか。
在宅血液透析と腹膜透析があります。そもそも在宅血液透析を目指される方というのは、とても積極的で、モチベーションが高い。そのメリットを聞いて、ぜひやりたいと希望されます。回数を多くするほど透析効率は上がるので、身体状況も大変よくなります。
在宅血液透析のハードルは、自己穿刺しなくてはならないという点です。テクニカルな面で制約があるので、そうは増えないでしょう。しかし、その点、腹膜透析はすでに定着した医療であり、大きく発展する可能性があります。
患者さんたちには、いろいろな選択肢があると認識した上で透析に入っていってほしいというのが願いですね。
当院の「CKD外来」では、腎臓病の基本や生活面で注意してほしいこと、将来の透析の話など、透析看護認定看護師や管理栄養士がゆっくり時間をかけてお伝えしています。血液透析、腹膜透析の違いもきちんと知ってもらう。これが在宅透析を推進していく上で大事なことです。
在宅だと、若い患者さんにとっては仕事も頑張れるし、家庭にいられる喜びを得られるというメリットがあるでしょう。高齢者はQOLを保ちつつ穏やかに年を重ねていけるという点に魅力を感じます。
透析が生活習慣の中でうまくなじんでいくことが大切で、それがなければ苦痛な治療の繰り返しになると思います。
家庭に使命を押し付けない 「たんぱく尿から移植まで」肝に銘じているポリシーです
―在宅透析の課題は。
今後、高齢者の数は今以上に増え、国の施策で在宅医療へと進んでいく。その中で在宅透析は、家族だけではなく、例えば訪問看護であるとか、それに準じる補助的役割の人たちが、「社会的資源」として介入しサポートするというのが、ひとつの形であり、健全な方向性ではないでしょうか。
その仕組みが整っていくことが、普及においても大きな支えになるでしょうね。家庭にあまりに強い使命を押し付けると、ゆがみや悲劇が起きるかもしれない。そうならないように。
高齢化の、いわゆる人生80年90年という中で、高齢の方に透析療法を導入せざるを得ないという現実も、われわれにとってジレンマがあるわけです。
だからこそ、臨機応変にその患者さんの状態や家庭の事情をかんがみて対応する。透析に入ったらどこで過ごすのか。自宅で暮らすのか、病院で過ごすのか、施設で過ごすのか、いろいろな選択肢が出てきます。命を守るというのが原則なのですが、透析も広い意味での「延命治療」ですから、そこは忘れてはならないと思っています。
「たんぱく尿から移植まで」とよく言われます。元気な人の健診での尿検査から、究極の腎代替療法である腎移植まで。全部をきちんとやるということが、腎臓病を診る医師のプライドであり、いかなる時でも肝に銘じているポリシーです。
日本赤十字社 福岡赤十字病院
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