九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

社会医療法人石州会 六日市病院 谷浦 博之 病院長

社会医療法人石州会 六日市病院 谷浦 博之 病院長

日々が静かに過ぎていくそれが一番じゃないですか

【たにうら・ひろゆき】 1983 島根医科大学卒業 同第2外科1987 飯塚病院 1990 島根医科大学医学部附属病院第2外科助手 1992 千代田中央病院外科部長 1993 同副院長 1995 加藤病院副院長 1996 六日市病院副院長 2004 同病院長 2011 介護療養型老人保健施設六日市苑施設長

 目の前にいる患者に何ができるか。「それを考え続けていたら、いつしか長い月日が経っていました」。任期は残すところ3年。谷浦博之病院長は、今日も静かな1日を願う。

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―吉賀町での役割は。

 人口およそ6500人の吉賀町で唯一の病院ですから、「オンリーワンの誇りと覚悟」をもって職務に当たるよう努めています。

 私たちがやるべきことは明確です。地域医療の根幹である救急医療を維持し、一人暮らしや老老介護で困っている高齢者を、隣接する老健「六日市苑」で受け入れます。たった一つの病院だからこそ、ニーズや医療情勢に合わせてどんどん変わっていくのです。

 レントゲンで骨折を診断したり関節に注射したり、子どものケガや病気も診察します。私はもともと外科医。今はメスを握ることはなく、専門医の認定証も返却しました。もちろん内科医でもありません。それなら総合診療医でしょうか。

 なぜ幅広く診るようになったかというと、求められているからです。医師、それに輪をかけて介護職員が不足しており、確保が難しいのが現実です。

 病院としては大きなビジョンに向かって走っていくのではなくて、現状のマンパワーをなんとか保っていくことが先決。

 ないものをねだっても仕方がありません。立地条件や国の施策の影響などによって、病院の努力だけでは解決できないことがあります。だけど、あきらめの境地というわけでもありません。それなら自分たちには何ができるだろうか。ここ数年は特に、そんな考えが強まった気がします。

―地域医療に対して感じることは。

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 先生の専門は?と聞かれて、「みなさんを診るのが専門です」と答えた方がいらっしゃるそうです。

 頭が痛い、腰が痛いと訴える患者さんが来たら、なんとかするのが総合診療医。医師の基本として誰もが学んできたことなのに、特別な教育を受けて専門医を目指すものなのだろうか、という思いがあります。

 自分の専門領域でない病気を治したいと思って勉強した。次の患者さんがやってきて、また新しいことを勉強した。繰り返すうちに自然と診療の力がついてきて、少なくとも、私はそれで総合診療医としてやってこられたのです。

 いろんな患者さんと関わって「この人たちと離れたくないな」と思うようになりましたし、スタッフと一緒に勉強して、いろんな課題と向き合いました。

 改善を図ってうまくいけば楽しいし、そうでなければ落ち込む。目の前の目標を少しずつ達成していく中で、外科医でなくなってから20年が経ち、いいチームも出来上がりました。

 振り返れば、きっと小さな目標がたくさんあったからこそ頑張ることができたのかなとも思います。2014年にヘリポートを設置することができたのも、少しでも良くしていこうという積み重ねの結果でしょう。

 実は昨年の11月、脳梗塞を患いました。当院に入院している間、患者目線で職員と接して、六日市病院のいいところをたくさん見つけることができました。

 今年、還暦を迎えたこともあって、残る人生をどう過ごすか、どんな病院にすることができるのか、あらためて考える1年になると思います。病院長でいるのはあと3年です。

 医学生だったころ、医師としてのやりがいは何かと想像したとき、たぶん患者さんから感謝の言葉をいただいたり、手術がうまくいったりすることだろうと思っていました。

 それはもちろんあるのですが、この町、この病院の日々がただ静かに過ぎていくことが大部分を占めているのかなと思います。

 「おはようございます」とあいさつをして、何事もなくすべての患者さんを診察して、帰宅して眠りにつく。そんな1日が続いていけば、一番いいことじゃないですか。

社会医療法人石州会六日市病院
島根県鹿足郡吉賀町六日市368-4
TEL:0856-77-1581
http://www.sekisyukai.or.jp/

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