九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

高知大学 学長 脇口 宏

高知大学 学長 脇口 宏

c02-1-1.jpg

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 国立大学は法人化に際して、「自己責任の下で自律的改革、機能強化・個性化に努める」責務と権利を付与されました。とりわけ、2012年6月の「大学改革実行プラン」以降、国立大学は、新学部・学科設置等の組織改革、地方創生・地域連携の旗頭、IR・ガバナンス強化、外部資金獲得増など、積極的かつ果敢に大学改革を進めた結果、地域行政・産業界、市民・県民などから深く親しまれ、大きな期待を寄せられる大学に生まれ変わりました。今や、地域と地方国立大学とは一蓮托生の関係と言っても過言ではありません。

 一方、諸外国に比較すると、我が国の研究成果が伸び悩んでいます。国立大学運営費交付金削減による「若手研究者育成の停滞」が一因とされていますが、「国立大学に対する交付金総額は維持、研究費は増額」との意見もあり、実情はもっと複雑です。安定した基盤研究費が著減し、20〜30年先の大きなイノベーションに繋がる基礎研究が実施困難になったのは事実です。我が国の競争的外部資金は継続性に乏しく、研究費を獲得した者がファカルティとして自立する米国の制度とは異なります。自然科学系のノーベル賞受賞者の多くは、20年以上前の基礎研究が実を結んだ結果であります。地道な研究があってこそ、世界の頂点を極める研究成果を出せるのが研究です。

 かつて、大学の任務は教育と研究でした。法人化後は社会貢献、地方創生が国立大学の重要な任務に追加されました。大学は社会人と若手研究者を育成する場ですが、教職員が減少し、業務内容が増えれば、相対的に教育・研究力が低下するのは当然の結果です。高知大学は、旧帝大に匹敵する論文サイテーションを維持するなどの努力を行っております。完成品に近い若手を採用できる研究所には大学以上の成果を出すことを期待しています。

 高知大学は、大学院改組の中で、大学院進学が景気に左右される理由を真剣かつ真摯に検討しています。一言で言えば、本学の大学院教育と学位の魅力が足りないということです。指導教員と大学院生が口をそろえて、「本学大学院の修了生は社会で活躍する確信がある、自信を持って社会に出て行ける」と胸を張って言える大学院に生まれ変わるために、鋭意検討中であります。

 国立大学の研究力低下は国力衰退に直結します。高知大学は国立大学として、更なる教育・研究力の向上と高知創生に邁進することを誓って、年頭のご挨拶とします。今後とも、ご支援の程宜しくお願い申し上げます。

記事に関する感想・コメントはこちらから

このフォームに入力するには、ブラウザーで JavaScript を有効にしてください。
名前
メニューを閉じる