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琉球大学医学部附属病院 病院長 藤田 次郎

琉球大学医学部附属病院 病院長 藤田 次郎

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 新年あけましておめでとうございます。今年も皆様にとって良い年になることをお祈り申しあげます。

 琉球大学医学部に赴任して、12年半が過ぎました。教授になってから県外への出張が多くなり、当然のことながら土・日・祝日でも教授室を離れることが多くなりました。出張後、教授室に戻ると、土・日・祝日であるにもかかわらず医局員からの連絡メモが机の上に置いてあることがよくありました。秘書が休みであるにもかかわらず、医局員はどのようにして私の部屋に入ったのだろうという疑問が湧いてきました。まさかと思い、教授室の鍵を使って、准教授室、講師・助教室、医局長室、医局、および実験室を開けようとしました。全ての部屋が開くことには驚きました。鍵が同じであるということは家族みたいなものであり、12年半が過ぎた現在でも、医局員、および医局秘書の総勢約60名が同じ鍵を共用している状態が続いています。

 さて2015年4月から、琉球大学医学部附属病院長に就任しました。第一内科の教授室の鍵に加え、新たに病院長室の鍵を管理することとなりました。病院長業務は多岐に渡り、また課題も多いことから日中の大半を病院長室で過ごすこととなりました。一度、事務部長と出張し、大学に戻った際に事務部長が、先生、鍵をお開けしましょうと、事務部長が自分の鍵を手にし、あっさり病院長室が開いた際には再度驚きました。病院長室も事務執行部の鍵で簡単に開くのです。12年前に味わったのと同じ感覚を経験しました。

 なぜ沖縄では当たり前のように鍵を共有できるのでしょうか。私の結論は、人々の心の中の良心に加えて、もう一つの良心があるから、ということです。沖縄県においては、ご先祖さま、および家族を大切に考える文化が残されています。ご先祖さまの魂は常に身近に存在しており、常に自分を見守ってくれているという考えが定着しています。このため、もし何か悪いことをしようとすると、「そんなことをしてはダメ」、というご先祖さまの天の声が聞こえてくるのだと思います。自分の心の中の良心と外から見守ってくれているご先祖さまの良心の両方が備わっているからこそ、ごく自然にセキュリティが保たれるのでしょう。早いもので、第一内科教授室では12年半、病院長室でも2年半以上の時が流れました。年頭に際し、今年も皆と鍵を共有しつつ、安心して仕事をしたいと改めて思います。

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