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「New FP療法」さらに前へ 肝がん治療研究に注力

「New FP療法」さらに前へ 肝がん治療研究に注力


久留米大学医学部 内科学講座 消化器内科部門
古賀 浩徳 教授(こが・ひろのり)
1988年岡山大学医学部卒業。米ブラウン大学留学、
久留米大学医学部内科学講座消化器内科准教授などを経て、
2015年から現職。同大学先端癌治療研究センター肝癌部門長兼任。

 「久留米大学先端癌()治療研究センター」で肝癌部門を統括する古賀浩徳教授。文字通り先進的な研究を進めながら、「New FP療法」と呼ばれる独自に開発した療法の普及にも取り組む。同療法の特徴や、今後の展望について聞いた。


―センターにおける肝がん分野の取り組みについて。

 本学の先端癌治療研究センターは1997年に創設され、がんワクチン分子部門、分子標的部門、そして私が部門長を務める肝癌部門があります。いずれも臨床と基礎の両面でがんの新たな治療法を研究・開発しています。当部門は内科学講座の消化器内科部門と、病理学講座から成り立っています。現在の主な研究テーマの一つは、免疫療法に関するもの。例えば、肝細胞がんに対する抗体療法と分子標的治療薬を組み合わせた「複合免疫療法」のバイオマーカーを探したり、免疫を無力化する分子・PD―L1の発現やその免疫外機能の解析などを行ったりしています。

 また「肝再生」をテーマに掲げ、肝硬変に対して血管内皮前駆細胞を使った再生療法も研究しています。その成果として、血管内皮前駆細胞を濃縮して動脈に入れると肝細胞を刺激して再生を促すことと、肝硬変の厚い線維を溶かす効果があることが分かりました。日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実用化研究事業に採択され、現在も臨床研究を続けています。


―「New FP療法」にも力を入れています。

 これまで、肝がんは肝炎ウイルスに起因するものが主流でした。そのような肝がんは比較的早期に発見・治療でき、さらに肝炎ウイルスに対する新薬も登場したことで肝がんの患者数は減少しています。一方、近年は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)や肥満、糖尿病などの代謝性疾患に関連する肝がんが増加。これらの患者さんはスクリーニングするのが難しく、発見した時点で肝がんがかなり大きくなっているという問題を抱えています。

 大きな肝がんの治療に関しては、抗がん剤を流して血流を止める肝動脈化学塞栓療法(TACE)がありますが、血流を止めずに抗がん剤を流し続ける肝動注化学療法もあります。後者をさらに改良したのが「New FP療法」です。1回の治療で5日間、足の付け根部分からカテーテルを通し、肝臓の血管内にとどまりやすい油性の造影剤と抗がん剤のシスプラチンを混ぜて注入。同時に抗がん剤の5―FUも流し、二つの作用でがん細胞を縮小させます。この治療法は肝臓の門脈に潜り込んで詰まっている腫瘍に大きな効果を発揮し、奏効率は76%に上ります。また多施設共同研究により、飲み薬のソラフェニブよりも予後を改善できることも分かりました。

 これからは、他の治療法と併用する戦略を考えています。例えば最近はアテゾリズマブとベバシズマブを組み合わせた複合免疫療法が注目を集めていますが、ここに「New FP療法」を加えることで、より大きな効果を期待しています。

―今後の展望は。

 「New FP療法」をさらに推進していきたいですね。以前は論文の発表数も少なかったのですが、現在は学会、研究会などを介して外部への発信力が高まっています。21年10月に当科が主催した国際肝臓カンファレンスでは、肝がん診療におけるオピニオンリーダーも「New FP療法」について触れており、認知が広がっている実感もあります。この流れが続けば、「New FP療法」という言葉が市民権を得る日も近いのではないかと思います。

 個人的には今後、がんの発生や再生に関わるシグナル伝達系「Wnt(ウィント)シグナル」の研究を進めて、これを突破口に新たながん治療法を見つけたいと思っています。

久留米大学医学部 内科学講座 消化器内科部門
福岡県久留米市旭町67
☎0942―35―3311(代表)
http://www.kurume-shoukaki.jp/

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