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37週以降は帝王切開を決断 県全体で連携し母子を守る

37週以降は帝王切開を決断 県全体で連携し母子を守る

琉球大学病院 周産母子センター
教授(めかる・けいこ)
1999年琉球大学医学部卒業、同産科婦人科入局。
琉球大学医学部附属病院(現:琉球大学病院)
周産母子センター講師などを経て、2019年から現職。

 2021年8月、新型コロナウイルスに感染した妊婦が急増した沖縄県。感染した母体を守るために奮闘してきた琉球大学病院周産母子センターの銘苅桂子教授に、どのような対策を講じたのか、話を聞いた。


―感染妊婦への対応は。

 20年4月に、沖縄県産婦人科医会でコロナ対策ワーキングチームを結成しました。実際の妊婦の感染者が出たのは同年の7月頃。最初は月に1〜2例ほどでした。あの頃はPCR検査の結果が出るのも遅く、分娩させていいのか1例ずつ悩みながら進めていました。

 沖縄県では、妊婦さんの感染が21年7月までの1年間で169例あったのですが、8月はなんと、ひと月だけで169例。1年で経験したことをこの1カ月で経験したことになったのです。そこで琉球大学では、37週以降で感染された方は、患者さんの安全と医療者の安全を守るために帝王切開をすることに決定。大学病院は多くの科が手術室を使っているため、緊急に帝王切開をするというのが難しい状況でした。超緊急の場合、15分以内で切開が必要なのですが、陽性の妊婦さんを陰圧室に運ぶのも簡単ではなく、医療者も防護服を15分以内に着ることはできません。「赤ちゃんを守るために」と、患者さんにも必ず納得してもらい実施しました。

 新生児は濃厚接触者として隔離、母親も隔離しなければならず、ベッドの確保が困難を極めました。県内でまん延した8月はどの病院もベッドを空けられず、結局、軽症、無症状の方は自宅療養となりました。

 大学病院でも一般の感染した方とベッドの取り合いでした。しかも感染症病棟の看護師が慣れていない中で突然、破水してそのまま出産することもあり、相当ストレスをかけたと思います。後に、コロナに感染した妊婦さんは早産率が高いという報告がされたのですが、突然の破水と早産で、医療者が濃厚接触者になるなど想定外のことが次々に起き続けた1年間でした。


―経験から得たものは。

 今回の経緯から、県内の産婦人科医全員、助産師も含めたビデオ会議の連携が実現。以前は、メールや電話で伝えていたのですが、それでは間に合いません。実は自宅療養をしていた方が24週で破水してしまった例がありました。ご本人も自分のような例が出ないように、マスコミにもお話しされていますが、この方の場合はギリギリのところで大学病院に運ばれ、無事に出産されました。

 その経験から、早産のリスクがある患者さんは、琉球大学か沖縄県立中部病院で診察できるよう連携を整えました。連携を強化し、県民の皆さんにも周知することも教育機関である琉球大学の役割だと実感しました。今回のことで情報共有が進んだことは、とても大きかったと思います。


―若年妊婦を支える活動も始まっています。

 大学は教育研究のみならず、地域に根差した医療をしなくてはならない、やるべきだと感じています。そこで、本学教育学研究科の上間陽子教授らが代表を務める10代の若年妊婦さんを支えるシェルター「おにわ」が21年10月に開設され、協力することになりました。沖縄県は出生率が全国1 位で、若年出産の割合も全国1 位。若年妊婦さんの場合は、家庭での虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)の被害といった背景もあるため精神的なトラウマを多く抱えており、地域全体によるサポートが必要です。

 子どもにまつわる社会問題が多い沖縄県唯一の医学部でありながら、医療にできることは限りがあり、出産後、福祉や教育との連携ができないだろうかと考えていました。沖縄県全体が地域に根差した問題を議論していく中で、私たちも教育機関として、しっかり対応していきます。

琉球大学病院 周産母子センター
沖縄県西原町上原207
☎098-895-3331(代表)
http://www.ryukyu-obgyn.jp/

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