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九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野 「診断」と「治療」の融合 発展へまい進

九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野 「診断」と「治療」の融合  発展へまい進

石神 康生 教授(いしがみ・こうせい)
1995年九州大学医学部卒業。
公立学校共済組合九州中央病院、米アイオワ大学臨床スタッフ(客員准教授)、
琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座准教授などを経て、2020年から現職。

 旧帝国大学で初の放射線科学教室として1929年に開講し、長い歴史を持つ九州大学の臨床放射線科学分野。2020年に就任した石神康生教授に、教室の強みや今後の展望を聞いた。

―教室の特色は。

 開講当初は、結核の患者さんにエックス線を当てる治療を行っていました。今では考えにくいことですが、当時は画期的な治療法だったそうです。戦後、胃がん検診、消化管造影検査の確立などを経て、現在はCT、MRIなど最新の画像診断・治療技術の臨床応用に取り組んでいます。

 前任の本田浩先生と九電工が樹立した遠隔画像診断ネットワーク(ネット・メディカルセンター)は、全国140の医療機関で活用され、ウィズコロナの時代にさらにその重要度が高まっています。

 直近では、7秒間息をしたままレントゲン撮影をすることで血流の動画が得られる「胸部エックス線動態撮影システム」の臨床研究をしています。造影剤が不要で、低線量であるため、さまざまな疾患に応用しています。

 放射線治療の分野では、骨盤リンパ節転移が起こりそうな領域を、ディープラーニングによりAIが自動抽出するというシステムを構築しました。まだ学会発表の段階ですが、AIの活用へ向けた研究が進んでいます。

―強みを教えてください。

 まずは規模です。多数の人材を輩出し、全国に医局員が約200人、東京都や山口県、九州に48の関連施設があります。

 次に、放射線科では珍しく内視鏡診断・治療も行うということ。消化管造影の歴史を受け継いだもので、食道がん放射線治療後に再発した患者さんに対する光線力学療法(PDT)も行っています。

 三つ目は、「診断」と「治療」分野が一緒に教室を運営していること。画像診断科と放射線治療科に分科せず、一つの放射線科として共に病棟を持ち、患者さんに寄り添うという伝統を守っています。

 専門医制度では、放射線診断か、放射線治療のどちらかを選ばなければなりません。入局して3年間は共通の知識・技術を学び、その後の2年間で専門医取得へ向けた研修を行います。米国では「診断」と「治療」は初めから完全に分かれていますが、日本でも近年は同様の傾向があります。

 「診断」と「治療」が分かれていないということは、学生にとっては選択肢が広がります。入局後3年の間に自分の適性を見極め、どちらに進むか決めることができます。

 また、画像診断・治療の最新機器や技術、情報を共有し、組織の垣根なく臨床や研究に取り組めるのも大きな強み。特に、核医学や画像下治療(IVR)は診断医、治療医を問わずに携われる分野です。こうした分野を介して「診断」と「治療」が有機的に結びつき、患者さん一人一人に最適な医療を提供する個別化医療へと発展していくことが期待されています。

―課題と、今後について。

 放射線科医の人材不足は深刻です。特に、放射線治療医の充足は喫緊の課題。高齢化やがん患者の増加に伴い、放射線治療のニーズは高まる一方ですが、人材を増やすには限界がある。その限界を補うのが、遠隔画像診断や遠隔による放射線治療のコンサルテーション、AIだと考えています。

 画像診断・治療機器や技術の進歩を肌で感じられるのは、放射線科の魅力です。最新技術の開発や実証、ブラッシュアップも重要な役割。将来的にはAIが診断・治療のかなりの部分を担うことが予想され、その目覚ましい進歩に追いつくスピード感覚を養わなければなりません。

 放射線科医は、患者さんとじかに接することは少ない反面、あらゆる診療科から画像診断・治療のコンサルトを受ける「縁の下の力持ち」です。現状に甘んじず、高い専門性とコンサルティング力を持つ人材を育成します。

九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野
福岡市東区馬出3─1─1 ☎092─641─1151(代表) http://www.radiol.med.kyushu-u.ac.jp/

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