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久留米大学医学部 外科学講座 心臓血管外科 ラグビー精神で「ノンテクニカルスキル」向上図る

久留米大学医学部 外科学講座 心臓血管外科 ラグビー精神で「ノンテクニカルスキル」向上図る

田山 栄基 教授(たやま・えいき)
1990年久留米大学医学部卒業。
米ベイラー医科大学留学、独立行政法人国立病院機構九州医療センター心臓外科科長、
久留米大学医学部外科学講座准教授などを経て、2020年から現職。

 1960年に人工心肺を使用した開心術、99年には大動脈瘤(りゅう)のステントグラフト内挿術を九州で初めて行うなど、伝統と実績を誇る久留米大学医学部外科学講座心臓血管外科。田山栄基教授に、「ラグビー精神」を生かした人材育成の手法について聞いた。

―どのような方針で教室を運営していますか。

 心臓血管外科医は、自分たちの流儀や治療アプローチにこだわる傾向があり、異なる大学から来た医師たちによるチーム医療は難しい、との話を聞くことがあります。

 私は九州医療センターに12年間在籍していましたが、同センターの心臓血管外科医たちは、非常に良い関係を維持し、素晴らしいチーム医療を展開していました。それができる要因は、「リスペクト」の一言に尽きます。

 自分たちの考えをきちんと言葉にして伝え、その根拠、エビデンスなどを納得がいくまでディスカッションします。そしてそれぞれの良いところを患者さんの治療に反映させることで、お互いにパートナーとして敬意を持って仕事に集中することができました。
 
 2020年に当教室の教授に就任してから、この「リスペクト」を運営の基本方針に掲げています。歴代の先生方をリスペクトし、その中で育った若い先生の考え方をリスペクトする。その上でよく話し合い、私が目指す新しい取り組みを進める。就任1年目は、その準備期間だったと捉えています。

―技術力などの向上のために工夫していることは。

 心臓血管外科医には、正確な診断力、適切な戦略力、高い技術力が欠かせません。診断力、戦略力、技術力の三つの「テクニカルスキル」を向上させるため、工夫を凝らした育成システムの実践に努めています。

 現在は、国内でも指折りのトップサージャンに定期的に教室スタッフへウェブ講演を行ってもらったり、手術手技の動画をスタッフがいつでも見られるようにウェブ上で共有したりしています。

 手術を行ったスタッフに内容と感想を記した報告書を提出してもらい、これを基にしたカンファレンスもしています。正確な診断をするためには経験を積むしかないですが、自分の経験だけでは限界があります。個人の経験が全員の経験として共有される、貴重な学びの場となっています。

―「テクニカルスキル」の他に向上させる能力は。

 「テクニカルスキル」を最大限に発揮するためには、コミュニケーションやマネジメント能力などを指す「ノンテクニカルスキル」も必要です。

 ノンテクニカルスキル向上のための新しい試みとして、個人が持つ能力を引き出す「コーチング」を計画しています。講師は、JPモルガン証券やドイツ証券などの外資系金融機関で活躍した経験を生かし、人材育成を行っている福留浩太郎氏。彼とは高校時代の同級生で、昔から誰に対しても偉ぶらず、相手の厚い信頼を得る人物です。

 スタッフの未開発の能力発掘、さらなるモチベーションアップを期待しています。

 私は大学時代、ラグビー部に所属していました。「ラグビー憲章」には、品位、情熱、結束、規律、尊重の五つの価値が示されています。これを外科医に当てはめると、品位は医師としての高い見識。情熱は患者さんと真摯(しんし)に相対すること。結束は仲間との協力。規律はルール厳守だけでなく、皆が同じ価値観を共有し、行動すること。そして、尊重は異なる意見でも必ず耳を傾け理解に努めることです。

 心臓血管外科医療は一人ではできません。信頼できるスタッフとの強いチーム力と各個人の鍛錬力が必要です。患者さんからは、技術も知識も高いレベルで期待されています。ラグビーの精神を生かし、それを実践できる外科医集団づくりを目指します。

久留米大学医学部 心臓血管外科
福岡県久留米市旭町67 ☎0942─35─3311(代表) https://www.kurume-geka.com/group/shinzo.php/

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