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歴史を継承 後進育て未来へ

歴史を継承 後進育て未来へ

熊本大学大学院生命科学研究部
産科婦人科学講座

近藤 英治 教授 (こんどう・えいじ)
1998年京都大学医学部卒業。長浜赤十字病院、米デューク大学留学、
京都大学大学院医学研究科助教、同講師、同准教授などを経て、2021年から現職。


 熊本大学の産科婦人科学講座の教授に6月、近藤英治氏が就任した。周産期とがん医療で実績のある講座の伝統を引き継ぎ、県内の医療体制をさらに充実させることを目標に掲げる。


伝統を受け継ぎ ロボ手術も充実

 1896年(明治29年)に開設された歴史ある講座に、第10代教授として名を連ねた。「産婦人科は人の誕生から関わるので、産婦人科を盛り立てることができれば、街も元気になるはず。縁あって来た熊本の産婦人科医療を活気付けたいです」と抱負を語る。

 自身が専門とする分野の一つが、周産期医療だ。「熊本県はしっかりと周産期医療体制が構築され、役割分担もなされています。この体制を継続して、安心・安全な周産期医療を提供していきます」

 もう一つの専門は、。先代教授の片渕秀隆氏が注力した子宮頸(けい)がんの啓発をはじめとするがん医療も引き継いでいく。

 今後発展させていきたいと考えているのは、産婦人科分野における腹腔鏡下手術やロボット支援下手術の導入だ。県内の主要な病院で最先端の手術が受けられるように技術を普及させ、数年以内に県内各地で安心・安全な手術が受けられるようにすることを目標にしている。日本ロボット外科学会認定専門医としても、先端手術分野の充実に力を注いでいく。


恩師の教え 熊本の地で「恩送り」

 大阪府出身で、京都大学で学んだ。同大学で当時教授だった藤井信吾氏(現:京都大学名誉教授)に熱心な勧誘を受けたことをきっかけに、産婦人科医のキャリアをスタートさせた。

 藤井氏には、絶対に手を抜かない、言い訳する医療をしてはいけない、患者には家族と同様に対応しなさい、という医師として根底に持つべき考え方を教わった。

 同様の考え方は、熊本大学のスタッフの中にも根付いていると感じるという。不思議に思っていたが、恩師の藤井氏と、熊本大学の先々代教授・岡村均氏が「兄弟弟子」の関係だったことを最近知り、その巡り合わせに驚いた。「学んだルーツが近く、『同じDNA』を持っているのだと感じました。本当に色々な縁があって、今の私がいます」

 恩師に育ててもらった感謝を胸に、これからは自身が講座を率いて後進を育てていく立場となった。「若い医師が多いので、一人ひとりが十分に力を発揮できるよう風通しの良い環境をつくるのが、私の仕事。自分が育ててもらった恩義を、次の世代に伝えていく『恩送り』をすることが、私の最大の使命です」

 人材育成は、比率の高い女性医師のライフイベントも考慮しながら進める。

 「10〜20年と時間はかかるでしょうが、人をたくさん育てたい。恩師のように、どこかで見ているかもしれないと思うと背筋が伸びるような、私もそんな存在になれればと思っています」と語る。

 人材育成と共に、熊本から世界に発信できるような研究にも着手していく。


「誰かのために」 年々思い強固に

 これまで、うれしいこともつらいことも、臨床の現場で経験してきた。命の誕生に携わる一方、がん患者や妊産婦が亡くなるケースも目の当たりにしてきた。

 妊娠を望む人がその機会になかなか恵まれないこと、予定通りに分娩(ぶんべん)が進行しないことなど、思い通りにいかないことも多々経験する。「だからこそ、産婦人科医は人に優しくできるのだと思っています」と語る。年々、自分本位ではなく、「誰かのために」という思いが強くなり、そのような環境に置かれていることのありがたさも感じているという。


県内の状況把握し 医療体制支える

 県内の産婦人科医療の現状にも、きめ細かに目を配っていく。6月の教授就任以降、慢性的な医師不足に陥っている病院や、単身赴任で家族となかなか会えない医師の存在など、県内の状況が徐々に分かってきた。医師の高齢化も進んでおり、「今の県内の周産期医療体制は、医師の献身的な姿勢でどうにか成り立っている」と考えるようになった。

 医師個人に負担が過剰にかからないように、「持続可能性」を重視した形で体制を構築する方法はないか―。前任地の京都大学で准教授として医局の人事に携わっていた経験も生かしながら、今後模索していく。「今も精いっぱいのサポートをしていますが、さらに県内全体の状況をよく把握した上で、地域を守る先生方を支えていきます」と力を込める。

 医療者として果たすべき使命は患者に安心・安全で最善の医療を提供することであり、チームが進む方向をぶれずに示す。そして、教室や関連病院で働く一人ひとりが仕事を通じて成長し、充実感や幸福感を抱くことができるよう職場環境の整備に注力している。自然と多くの人が集いたくなる魅力ある教室を目指して。



熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学講座
熊本市中央区本荘1-1-1 ☎096-344-2111(代表)
http://kumadai-obgyn.net/

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