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「睡眠」を窓口に 精神疾患に向き合う

「睡眠」を窓口に 精神疾患に向き合う

医療法人仁祐会 小鳥居諫早病院
小鳥居 望 院長(ことりい・のぞむ)
1997年久留米大学医学部卒業。
米スタンフォード大学医学部精神科睡眠・生体リズム研究所ナルコレプシー研究所留学、
久留米大学医学部講師、小鳥居諫早病院副院長などを経て、2020年から現職。


 睡眠障害の治療を強みの一つとする精神科病院「小鳥居諫早病院」。小鳥居望院長は、久留米大学時代から睡眠覚醒リズムの遅れに対する薬物療法の研究を進め、睡眠衛生指導や睡眠日誌と並行することで良好な治療成績を得てきた。近年の患者の傾向と病院の変化を聞いた。

─若年患者が増えていると聞きます。背景や対応を。

 2020年の新患の内訳は10代が19%、20代が29%で、全体のおよそ半数を占めました。特に多かったのは、睡眠トラブルで学校や職場に通えなくなった方々です。この傾向には、スマートフォンの普及が深く関与しています。若年者の受診が増加したのは10年ほど前。スマホの保有率が急激に上昇(2011年29%→2012年50%→13年63%=総務省「通信利用動向調査」)した時期と重なります。

 スマホを日常的に夜中まで使うと、体内時計が遅れ、就寝が遅くなります。十分な睡眠が必要な年代に体内時計の遅れが組み合わさることで、朝の起床困難で苦しむ若者が急激に増加。たとえ登校・出勤できても、睡眠不足下ではパフォーマンスが低下し、適応障害やうつ病にもなりやすくなります。コロナ禍では、スマホがライフライン的な存在となり、この傾向は一層広がっているように思います。

 若年層の受診が増えた要因には、神経発達症(発達障害)の概念が浸透してきたことも背景にあると思います。睡眠障害は神経発達症の二次障害の代表格で、睡眠外来に訪れる若者の中にも、神経発達症が疑われるケースが多く見られます。自身の発達障害を疑って心理検査を希望する人も増えており、臨床心理士を増員して対応しています。

─貴院で力を入れてきたことは。

 向精神薬の効能と安全性の向上で、精神医療の質は格段に向上しました。しかし、薬には副作用もあります。「必要な時にできるだけ少量使い、改善すれば減量」が望ましいのは言うまでもありません。そこで力を入れているのが薬以外による治療です。ものの見方や捉え方(認知)に働きかけ、適応的な行動変容を目指す、2種類の「」を、2年前から導入しました。

 一つは不眠症に対するもの。睡眠を妨害するような生活習慣(例えば寝酒)や心配ごとに焦点を当て、週1回、計5回のセッションを実施。適切な睡眠習慣を取り戻していきます。

 睡眠薬ほどの即効性はないものの、不眠に対する複数の解決法を身につけられ、セッション終了後も効果が持続する利点があります。大半は薬との併用例。徐々に減薬できる例も少なくありません。睡眠の専門医療機関として不眠の要因を把握し、薬を適正に使用すること、さらにこのような手法を組み合わせることで、より安全で効果的な治療を模索しています。

 もう一つは、うつや不安に対するものです。人は強いストレスを受けたり、うつ状態に陥ったりすると、認知にゆがみが生じ、自らや周囲を傷つける不適応的な習慣が身についてしまいます。現実的でしなやかな考え方を身につけ、悪循環を解消していくことを目的としています。

 認知行動療法はこれまで外来患者さんのみが対象でしたが、2021年に入院中も行うことができるプログラムを作成。さらにマインドフルネスの手法を病棟スケジュールに取り入れる試みも模索中です。治療プログラムの充足により、急性期医療の質が大きく向上していると感じています。

 今後は、「睡眠」を窓口に、精神疾患の治療にアプローチしていく手法をより洗練させ、非薬物的な治療プログラムの拡充を図りながら、当院独自の治療スタイルの確立を目指します。その実現には、多職種が力を合わせ、リカバリーを推進していく姿勢が不可欠です。そのようなスタッフの情熱を大事にする病院でありたいと考えています。


医療法人仁祐会 小鳥居諫早病院
長崎県諫早市栄田町38-16
☎0957-26-3374(代表)
http://www.kotorii.or.jp/

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