九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

医療的ケア児、若い患者が安心して暮らせるように

医療的ケア児、若い患者が安心して暮らせるように

三重大学医学部附属病院 小児・AYAがんトータルケアセンター
岩本 彰太郎 センター長(いわもと・しょうたろう)
1992年三重大学医学部卒業。
三重県済生会明和病院、米セントジュード小児研究病院、
三重大学医学部附属病院小児トータルケアセンター長などを経て、2021年から現職。

 4月に三重大学医学部附属病院に新設された「小児・AYAがんトータルケアセンター」。小児期の患者や思春期・若年成人(AYA世代)のがん患者が、適切な医療を受けながら安心して社会生活が送れるよう、包括的な支援を目指している。センター長を務める岩本彰太郎氏に話を聞いた。

─センター発足の経緯は。

 小児医療の進歩により、医療的なケアが日常的に必要な「医療的ケア児」が三重県内でも増えました。当院には重症度の高い子どもが集まりますが、退院後の生活は容易ではありません。医療的ケア児と家族を支えるため、2014年に開設したのが、現在の組織の前身となる「小児トータルケアセンター」です。

 県のワーキンググループと連携して、学校への指導医の派遣や、超重症児のスクーリング支援をしたほか、医師会などとは、在宅医療の担当医を探すシステムを構築しました。さらに、地域密着型の組織網をつくろうと、全29市町に出向いて県内に四つの重症児の地域ネットワークを構築。好事例の共有などを行ってきました。

 当院は全国に15カ所ある小児がん拠点病院の一つです。18年に小児がん拠点病院の指定要件が見直され、主に15~39歳のAYA世代への対応強化などが盛り込まれました。私たちはAYAがんチームや高度生殖医療チームなどと連携して、入院生活や退院後のサポートに関わってきました。

 就学・就労、教育、結婚、妊孕(よう)性、晩期合併症、家族性がんなど課題は患者さんの年代によって多岐にわたり、より細やかな支援が必要です。このような背景を踏まえ、小児からAYA世代まで長期的、包括的に支えるために「小児・AYAがんトータルケアセンター」を新設しました。スタッフは小児科医、小児看護専門看護師、医療ソーシャルワーカーなどの専門職を配置しています。

─取り組んでいることは。

 まず、小児の医療ケアについては、大きな課題が二つあります。①医療的ケア児と家族をサポートする支援者の孤立②短期入所が可能な施設など、地域で利用できる社会資源の不足―です。①については、支援者に助言・指導するアドバイス機能、②は受け皿拡充のためのコンサルテーション機能が必要だと考え、この両方の機能を備えた「スーパーバイズ機能」の確立を目指すことにしました。

 これを担うのは、経験豊富な多職種の人材による横断的なチーム。相談の内容に応じ、チームからメンバーを選ぶ仕組みで、県内四つのネットワークにそれぞれチームをつくって動かす予定です。例えば、他地域で里帰り出産をして子どもが人工呼吸器を付けて三重に戻る家族を担当した保健師が、対応をチームに相談する。あるいは短期入所が可能な事業所の創出に向けた予算取りに動くといったことを想定しています。

 がんについては、よりシームレスな院内、地域との連携を目指します。支援チームや外来機能の強化で患者サポート力を向上させ、長期的な支援をしていきます。

─今後の展望は。

 数年かけて、県のがん診療連携拠点病院など約20の医療機関と「AYAがん診療ネット」を構築し、支援体制を強化する予定です。啓発活動にも力を入れたいと思っています。子どもたちや家族、AYA世代にとって、命が助かった後の生活環境の充実は、切実な問題です。残念ながら緩和やみとりにつながる場合もありますが、それを支える人材育成も重要な柱にしています。

 大切なのは、地域や行政、福祉など、関わりのある人たちとの話し合いの場を積み重ねていくこと。患者さんや家族が少しでも安心して暮らせるよう、地道に活動を続けていき、先進事例として他地域にも共有できればと思っています。

三重大学医学部附属病院 小児・AYAがんトータルケアセンター
津市江戸橋2―174
☎059―232―1111(代表)
https://www.hosp.mie-u.ac.jp/children-tcc/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる