九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

診療科独立から5年 地域への浸透図る

診療科独立から5年 地域への浸透図る

高知大学医学部 脳神経内科学教室
古谷 博和 教授(ふるや・ひろかず)

1982年鹿児島大学医学部卒業。米国立衛生研究所(NIH)訪問研究員、
九州大学大学院医学研究院内科学講座神経内科学講座助教授、
高知大学医学部老年病・循環器・神経内科学講座神経内科教授などを経て、2016年から現職。


 高知大学の脳神経内科学教室は、2016年に単独の診療科として独立し、2021年4月で5年が経過した。独立当初から教授を務める古谷博和氏はこれまで、地域に脳神経内科を根付かせることと、後進の育成に力を注いできた。

─単独診療科となってからの5年を振り返って。

 本学部の前身である高知医科大学が開学したのは1976年で、当科が老年病・循環器・神経内科から独立したのが2016年です。40年の間、高知県では脳神経内科分野がほぼ空白状態で、診療は脳神経外科や精神科が担ってきました。そのため、地域の医療機関にとっては、脳神経内科がなくても特段支障はないという認識があったかもしれません。まずは、脳神経内科の特徴や重要性を知ってもらうことが大切だと考えました。

 脳神経内科は、脳の機能などを詳細に評価するのが特徴の一つです。実際にベッドサイドで問診して、しっかり診察することで、目に見えない病変や症状を診断する。患者さんを丁寧に診ることが強みであり、他科との違いだと思っています。私は、脳神経内科があることでその病院の診療全体の密度・精度が高くなると自負して日々取り組んでおり、この考えは5年間で少しずつ地域に浸透してきたのではないかと感じています。

─人材育成についても力を入れてきました。

 高知県に脳神経内科を根付かせるためには、やはり専門医を増やすことが一番重要です。私は本学に赴任してから、自分が教えられる範囲の全てを学生たちに伝え、とにかく興味を持ってもらうことに主眼を置いてきました。その成果もあってか、最近は毎年入局者がいます。

 ただ、現状ではまだ人手不足です。本学の場合、医学部生の約3割が卒後に高知に残り、約7割は県外に出てしまう。実際に入局を希望するのは3割の中の一部なので、マンパワー不足をすぐに解消するのは難しいのです。それでも、こつこつと脳神経内科の魅力や面白さを伝え続け、スタッフを増やしていきたい。

 高齢化が進み、神経変性疾患が増加しつつある今、脳神経内科が果たす役割は大きくなっています。地域医療に貢献するためにも、専門医の育成に引き続き力を入れていきます。

─今後、新たに取り組みたいことは。

 脳神経内科の診察は、ベッドサイドで多くの情報を得ることができます。最近はMRIやCTなどの神経画像が優先されがちですが、症状を説明できるような画像が見いだせないこともあり、ベッドサイドで全身を問診、診察した上で検査に進むことが非常に重要です。

 今後は、この診察の精度をさらに高めたい。例えば、「腹壁反射」による診察は神経画像がない時代に確立し、現在も継承されています。しかし、加齢に伴って反応が出なくなるなど曖昧な部分があります。その部分を、最新の神経画像などを用いながら具体的に明らかにすることで、結果的に診察レベルが向上し、新しい診断方法の発見にもつながるのではないかと思っています。

─若い医師へ向けてメッセージを。

脳神経内科は頭のてっぺんから足の先まで診察します。足が動かない患者さんがいた場合、筋肉が悪いのか、末梢神経が悪いのか、脳の異常なのかを見極める必要があります。総合診療の側面があり、面白さの一つでもあると思います。

 また、最近はゲノム解析などの分子生物学的な医療が急速に発達しています。おそらく、今後の脳神経内科は、ベッドサイドでの診察の「マクロの医療」と、ゲノム解析などの「ミクロの医療」を橋渡しする役割が求められるでしょう。これに魅力を感じた方は、ぜひとも脳神経内科医の道を進んでほしいですね。

高知大学医学部 脳神経内科学教室
高知県南国市岡豊町小蓮185―1
☎088―866―5811(代表)
http://www.kochi-u.ac.jp/kms/shink/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる