九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

分子生物学を駆使し 脳の発達・疾患と進化に迫る

分子生物学を駆使し  脳の発達・疾患と進化に迫る

金沢大学医薬保健研究域医学系 脳神経医学研究分野
河﨑 洋志 教授(かわさき・ひろし)

1990年京都大学医学部卒業。
米デューク大学・ハワードヒューズ医学研究所留学、
東京大学大学院医学系研究科特任准教授などを経て、2013年から現職。


 脳表面にシワが多く存在する哺乳類ほど高度な脳機能を有すると考えられている。金沢大学の河﨑洋志教授は、イタチ科の動物「フェレット」を使用した独自のアプローチによる研究で、人の脳に迫っている

─「フェレット」を使って脳の研究を進めている点が大きな特徴ですね。

  私たち人間の脳は、複雑で精巧にできています。しかし時々、異常が起き、その異常による病気も多く存在します。脳が正しく出来上がる仕組みを理解することが、病気の解明にもつながると考え、研究を進めています。

 人間の脳の表面、大脳皮質には多くのシワがあり、そのシワが脳の発達のために重要だと考えられています。実験でよく使われるマウスは、脳にシワがなく、シワなどの研究には向いていません。そこで私たちは、脳が発達しており、入手や飼育がしやすいフェレットを選択しました。

 まず、フェレットの脳の中の遺伝子を操作する技術を開発し、その技術を用いて、フェレットを使った脳の研究を進めています。フェレットの脳を使った研究の成果は、海外にも伝わり、各国の研究者からフェレットの脳を使い実験したいとの連絡が入っていますし、共同研究も始まっています。

─見えてきたことは。

 フェレットの脳を使用した実験で、シワの形成に関係する遺伝子を明らかにすることができました。また、マウスとフェレットを比較した場合にフェレットに多く存在する遺伝子を、フェレットでさらに増加させると、脳のシワが増える現象が観察されました。進化の過程でこの遺伝子が増加し、それに伴って脳のシワも増えてきたのではないか、と私たちは推測しています。

 大脳皮質のシワは、フェレットを含め、人間以外の多くの哺乳動物にも存在しますが、人間の脳には特に多くのシワがあります。シワの重要性、進化や病気とのつながりが、世界的にも熱い研究テーマになっていますし、さまざまな研究が進められています。

 マウスからフェレット、サル、人間まで、進化の各段階で何が起こったのか、多くの研究者が追究しています。解明できた各段階の出来事を総合することで全貌が明らかになり、人間に至る進化のプロセスがわかると考えられます。現在、フェレットの脳にとどまらず、人間のiPS細胞を使用した脳の研究も可能な状況になりつつあります。私たちも、そこまで追究してみたいと考えています。

 また、今後は脳の疾患へと研究対象を拡大したいと考えています。脳は、原始的なところから発達して、非常に複雑なものになりました。故に、病気になりやすくなっているのではないか―。その観点から、脳疾患の原因を解明していきたいと思っています。

教室の強みとは。

 当教室は、分子生物学をメインにした研究を数多く行っています。しかしメンバーのバックグラウンドは分子生物学に限りません。医学、薬学、獣医学、工学など多方面。さまざまな知識が混ざり合うことによる、新しいアイデア、発見に満ちた教室だと思います。

 どの領域から参加しても、基礎となる分子生物学の知識や技術を身に付けられることも当教室の特徴です。かつての研究室は、職人芸に近い世界で、「見て覚える」「とりあえずやってみる」が基本だったと思いますが、私たちは、研究方法から論文の書き方まで、まずノウハウを共有することを重視しています。

 研究は非常に興味深く、面白いものです。そして多くの人は研究を続けるための潜在的な力を持っています。人を育て、花開かせることが当教室の使命の一つ。研究に熱意がある人はぜひご連絡(kawasaki@med.kanazawa-u.ac.jp)ください。共に研究を推進していけたらうれしく思います。

金沢大学医薬保健研究域医学系 脳神経医学研究分野
金沢市宝町13-1
☎︎076―265―2363
http://square.umin.ac.jp/top/kawasaki-lab/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる