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「骨ねじ」治療法を発展 移植の新たな可能性

「骨ねじ」治療法を発展 移植の新たな可能性

島根大学医学部 整形外科学教室
内尾 祐司 教授(うちお・ゆうじ)
1986年島根医科大学(現:)医学部卒業。
英リーズ大学リウマチ・リハビリテーション研究所、島根医科大学医学部附属病院、
同医学部外科学講座整形外科学教授などを経て、2006年より現職。


 患者自身の骨から作った「」による骨折治療法を開発した、島根大学医学部整形外科学教室の内尾祐司教授。研究を発展させ、骨欠損部の形状に合わせて精密に3次元造形した骨を移植する「骨折治療支援システム」の完成を目指している。

―骨ねじ開発のきっかけを教えてください。

 講師時代、膝蓋骨(しつがいこつ)骨折の患者さんに生体吸収する新素材の人工ピンで固定する手術を行いました。通常は金属ねじを使いますが、関節部付近では支障を来す可能性があり、抜釘(ばってい)の再手術も必要なことから見送りました。
 1年後、骨が固着し、予後も良好なため治癒と判断。ところが5年後、患者さんが訪れ「膝を動かすと痛い」と訴えます。再検査で残存する人工ピンが見つかり、異物反応で周囲が炎症を起こしていたことが判明。これをきっかけに新ねじの開発に取り組みました。

―完成に至るまでの経緯について。

 患者さんから採取した自骨を使用すれば異物反応が起きず完全吸収されます。樹木のようなセル構造の骨を、ひび割れを起こさずねじに仕上げるには、新たな加工機械の開発が必要です。しかも、骨折治療の手術中に素材となる骨を採取し、その場でねじに加工しなければなりません。手術室に持ち込め、テーブルに乗せられるサイズ、音が静かであることなど、複雑な条件が求められました。

 開発に協力してくれたのが、神奈川にある精密加工や小型フライス盤などの開発、製造などを行っている株式会社ナノの林亮・前社長。職人気質の方で、所有する工場で骨ねじに特化したコンパクトな加工機械を、3年かけて完成させてくれました。

 大学の優れた研究成果を選出する「イノベーション・ジャパン2005」に出品し、最高賞のUBSスペシャルアワードを医療福祉部門で受賞しました。翌年、大学附属病院倫理委員会から臨床応用も承認され、2007年から骨ねじの本術式を施行し、実績を重ねています。

―この研究を応用した新たな治療法について。

 骨ねじの研究を発展させ、現在、島根県産業技術センターや地元民間企業などと協力し、交通事故など大きなけがにより失った骨の欠損部の再建を目指す「骨折治療支援システム」の開発を進めています。

 レーザーを照射して読み取った欠損部の形状データを、コンピューター制御の「骨材用複合加工機」に入力すると、アームが自動的に動き出して誤差50マイクロメートルの精度で3次元骨組織を造形します。これを移植するものです。

 骨量が必要なため他の人の骨を使用しますが、マイナス70度で冷凍すると拒絶反応の心配がなくなります。含まれている骨形成タンパク質によって通常より早く骨が同化するメリットがあり、2021年度中の臨床応用を目指しています。

 これは、人工関節を使用する患者さんにとっても朗報です。時間の経過とともに緩んでくるため、患者さん自身の骨で補填(ほてん)する治療を行いますが、採取できる量に限りがあります。また、パズルのように合致する骨片を手動で削り出すのは非常に困難で、欠損が残る場合があります。

 「骨折治療支援システム」を確立することで、他の人の骨を用いて欠損部分にちょうど合う造形をして移植が可能になれば、術後の経過は格段に良くなり、患者さんのQOLが向上すると期待しています。

 奥出雲の伝統工芸品、雲州そろばんの職人だった父の血を受け継いだ私は、林前社長と同じ、根っからの職人気質。この研究は小さな町工場のようなものかもしれませんが、それでも喜んでくれる患者さんがいる限り、この職人気質的医師の道を今後も進みます。

島根大学医学部 整形外科学教室
島根県出雲市塩冶町89―1
☎︎0853―23―2111(代表)
https://www.med.shimane-u.ac.jp/orthop/

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