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大阪市立大学大学院医学研究科 視覚病態学教室 遺伝子検査で予後予測、手術システム導入

大阪市立大学大学院医学研究科 視覚病態学教室 遺伝子検査で予後予測、手術システム導入

 視覚病態学教室
本田 茂 教授(ほんだ・しげる)
1991年神戸大学医学部卒業。
同大学医学部附属病院、米カリフォルニア大学デービス校、
神戸大学大学院医学研究科眼科学准教授などを経て、2018年から現職。


 高齢化の進行で、緑内障や加齢黄斑変性などで視力を失う人が増えている。大阪市立大学の視覚病態学教室を率いる本田茂教授は、遺伝子検査をはじめとする最新の医療を実践し、次世代を担う医師の育成に努めている。教室の特長や眼科医療の今後について聞いた。

―教室の特長は。

 当教室には、大きく分けて二つの柱があります。一つ目は、視力の低下を引き起こす「加齢黄斑変性」に代表される網膜疾患の臨床・研究です。数十年の歴史があり、日本有数の患者数と医療レベルを有しているのではないかと思っています。糖尿病網膜症や網膜剝離、黄斑円孔などに関する手術のほか、眼内炎に対する硝子体手術後に遺伝子検査を行い、病原体を特定して予後予測に役立てる研究も進めています。

 もう一つの柱は、目にできる腫瘍についてです。目の外側の炎症性疾患であるバセドー病眼症の治療についても、特に力を入れて取り組んでいます。

 2019年は白内障、硝子体手術、緑内障などについて年間約1800件の手術を行っており、このうち約200件は網膜剝離などの緊急手術でした。他の医療機関で手術した患者さんの紹介にも対応しています。

―先端医療と、人材育成について。

 内科的な治療では、分子標的薬を用いた抗VEGF(血管内皮増殖因子)療法が登場し、外科的な治療では硝子体手術の低侵襲化が進んでいます。画像検査も進歩しており、網膜の断層撮影や造影剤を使わない血管画像撮影が可能になっています。

 当教室では、顕微鏡をのぞかずに手術ができる「Heads-up surgery」というシステムを取り入れています。術野をカメラで撮影し、3Dモニターに投影する手法で、専用の偏光眼鏡を通して目の組織を鮮明に見ることができます。今後広く普及すると予測しているため、解像度が高い機器を20年に導入し、若い医師への指導に力を注いでいます。教育面では、「ウエットラボ」を24時間体制で開放し、教材をオンラインで共有するなど、自ら進んで学ぶことができる環境を整えています。

 眼科医の魅力は、内科的、外科的な治療がどちらもできることです。私の専門は加齢黄斑変性なので注射やレーザー治療などの内科的治療が主体ですが、網膜剝離や糖尿病網膜症の手術も多数行っています。一人の患者さんに対し、一人の眼科医がシームレスな治療を提供することが可能です。

 目の疾患は大半が加齢に伴うもので、高齢化の進行に伴って罹患(りかん)する人が増加しています。一人でも多くの人に社会に貢献する眼科医になってほしいと願っていますが、どう役立つかは個々の意思に委ねられます。

 女性医師が比較的多い診療科でもありますが、大学教授として学術分野で活動されている方もいれば、基幹病院で手術経験を積んで活躍している方、家族のサポートをしながら非常勤で勤めている方など働き方はさまざま。一つの価値観に縛り付けるのではなく、多様性を許容する雰囲気を教室全体でもつくっていきたいと考えています。

―今後目指すものは。

 遺伝的な背景を予後予測に役立てる個別化治療を進めていきます。遺伝子も含めて、個人差のもとになっているものを見極め、治療設計を行っていければと思っています。

 標準治療は母集団の平均に対する結果から導かれるもので、個人に対しては必ずしもベストではない可能性があります。最初から見極めて治療をすれば、全体の治療成績も上がるはず。遺伝子についても、何百人、何千人のデータを解析していくのは大変な作業ですが、地道にやっていかなければなりません。その結果が、一人一人の患者さんに合った医療の実現につながっていくのではないかと思っています。

視覚病態学教室
大阪市阿倍野区旭町1─4─3
☎06─6645─2121(代表)
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/ophthal/

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