九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

県民の健康寿命延伸へ 産官学で予防啓発

県民の健康寿命延伸へ 産官学で予防啓発

愛媛大学大学院医学系研究科 循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座(第二内科)
山口 修 教授(やまぐち・おさむ)
1995年大阪大学医学部卒業。
大阪警察病院、日本学術振興会特別研究員、
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学准教授などを経て、2018年から現職。


 愛媛大学は、愛媛県、製薬会社・ノバルティスファーマと、愛媛県民の循環器疾患による死亡率の低下を目指す産官学のプロジェクトを2020年7月に始動させた。産官学の連携を働きかけた山口修教授に、実現に至るまでの経緯や活動内容、今後の展開を尋ねた。

―産官学連携の経緯は。

 3年前に当大学に着任して愛媛県の循環器疾患の状況を調査した際、「あまり良くない状況」であることを認識しました。2015年の人口動態統計特殊報告によると、県内の心不全による死亡率は女性が全国1位で、男性は2位。全国平均よりも約1.6倍高かった。循環器病対策基本法が成立したこともあり、何か私たちにできることはないか考え、県知事に面会する機会を設けてもらいました。

 知事も循環器疾患の予防は大きな課題の一つだという認識を持っていました。対策を進めるには啓発活動が重要ですが、実施には予算が不可欠。どのように予算を確保するか悩んでいた時に、国内での社会貢献の取り組みを模索していた製薬会社のノバルティスファーマからアプローチがあり、産官学で連携して予防対策に取り組むことになりました。

 実際に産官学で最初に会合を持ち始めてからおよそ半年後の20年7月に連携協定の締結にこぎ着けました。3者が共通の問題意識を持ち、かなりスピード感を持って進めることができたと思います。

―取り組みの内容は。

 産官学で挑む目標は三つ。①県民の健康寿命の延伸②循環器病に関連する死亡率の低下③循環器病入院の抑制を通じた各患者の医療費の適正化―です。

 まず着手したのは、県民への啓発活動です。20年11月に対策推進週間を制定し、県のイメージアップキャラクター「みきゃん」を活用してテレビCMや新聞広告、路面電車の車内広告を展開。「その息切れ…心不全の症状かも。」「『心臓からのSOSを見逃してはいないか』そんな気持ちで、ご自身の症状を振り返ってみることが大切です。」などと発信しました。病院や調剤薬局、地元企業へも啓発ポスターの掲示を依頼しています。

 ノバルティスファーマなどが開発した家族間で健康状態を見守るサービスもプロジェクトのウェブサイト内で紹介しています。

 21年4月からは、FM愛媛で毎週水曜日に15分間のラジオ番組「愛媛のハート、まもりたいけん!」をスタートさせました。「心不全ってなに?」「こんな症状があったら要注意!」といったテーマを設定して、医師が解説して県民の皆さんに正しい知識を身に付けてもらいます。今後も県内各地域の先生に出演してもらい、健康増進に向けたメッセージを届けます。

―大学が担う役割は。

 私たちは、研究を中心に担います。心不全による死亡率が高いことについては、治療状況や健診受診率の低さなどさまざまな要因が関わっていて、直接的な原因は分かりません。

 現在は、県が持っている匿名化された保健福祉に関わる情報を活用し、患者さんの治療状況などを基に地域ごとの状況を推察していて、今後それに応じた対策を検討していきます。

 大動脈弁狭窄(きょうさく)症に関する基礎医学的な手法を用いた研究もさらに進め、診療面では四国で唯一の「植込型補助人工心臓実施施設」として、認知度をさらに向上させていきたいと思っています。
 これまで啓発活動の中心に据えたメッセージは、すでに症状が出ている人に向けたものでした。21年に予定している第2弾では、健康な方に対して心不全にならないためには血圧管理などが重要だということを伝えていきます。

 このプロジェクトは、短期間ですぐに結果が出るものでは決してありません。5年、10年後に心疾患による死亡率が低下し、好転したターニングポイントが今のこの時期になるように、地道に取り組みを続けていきます。

医学系研究科循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座(第二内科)
愛媛県東温市志津川454
☎089―964―5111(代表)
https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/int.med2/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる