今月の1冊 – 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

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新井紀子
東洋経済新報社

 企業の人材採用の選考プロセスにおいてAIの活用が広がっている。例えば人間に代わってAIが「面接官」を務めるサービス。応募者はスマホなどを介して時間365日、いつでもどこからでも面接を受けることができる。

 日程調整の必要もなく、人件費の削減になり、評価のバラつきもない。これまでのように書類だけで判断されることはなく、平等に自分をPRするチャンスが与えられる。

 AIに任せられる仕事はAIに。AIにできない仕事は人間に。あっ、ちょっと待った。「AIにできない仕事=人間ができる仕事」とは限らない。よく耳にする「シンギュラリティ(人間の能力を超える)」が到来するなら、AIがあらゆる仕事を奪うのでは。大変だ!

 そんなことは起こらない。そう本書で断言する、数学者の新井紀子氏。なぜなら、コンピューターは「計算機」だから。

 世の中の事象の大半は数式への置き換えが可能だ。目的地までの経路を知りたい、時刻表を調べたい、おいしいお店を探したい。ざっくりとした質問にも快く応じてくれるAIは、言葉の意味を理解して「えーと」などと考えて答えているわけではない。問いかけられていることを、足し算と掛け算の式として計算して「あたかも理解しているふり」をしているのだ。

 人間には、「意味を理解する」ことや「一を聞いて十を知る」能力といったアドバンテージがある。のだが、昨今、若年層をはじめ、基礎読解力の低下がささやかれている。文章を読めても理解できないのは「AIに代替されやすい人材」とも言える。さて、この欄の文章の意味、分からない人はいますか? (瀬川)

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