「YESでも、NOでもいい。臓器移植を知り、提供についてしっかり考えて、意思表示を―」
脳死の人からの臓器提供による移植が可能となった「臓器移植法」施行から22年目を迎えた。しかし、臓器移植への関心は、まだまだ高いとは言えない。件数も、伸び悩んでいるのが現状だ。
国際移植学会は10年前、移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすべきとする「イスタンブール宣言」を出した。移植が必要になったとき、助け、助けられる体制はこの国で構築・維持できるのだろうか。
「意思が決まらない」「後で記入しよう」で85%が意思表示せず
2017年度の「移植医療に関する世論調査」によると、臓器移植に「関心がある」と答えた人は56.4%。半数近い43.6%が「関心がない」と答えた。関心があると答えた人の割合は、男性よりも女性が高く、年代別に見ると、40代が高い関心を持っていた。
しかし、臓器提供の意思の記入状況をたずねた設問では、「記入していない」が85.2 %。理由として「自分の意思が決まらないから」あるいは「後で記入しようと思っていたから」を挙げた人が最も多く25.4%。「臓器提供や臓器移植に抵抗感があるから」(19.9%)、「臓器提供には関心がないから」( 17.0%)と続いた。
「家族などと臓器移植や臓器提供の話をしたことがあるか」との質問には、「ない」が64.2%。「ある」の35.4%に大きく差をつけた。
家族と話題にしたことはあるものの、書面による意思表示をしていないという関東地方の60代女性は、「『死』について語ることに、なんとなく抵抗感がある」と語った。
臓器移植普及推進月間仲間と話すきっかけに
日本臓器移植ネットワークによると、9月30日現在で移植を希望して登録している患者の数は、心臓で714人、肺で336人、肝臓で332人、膵臓212人、小腸2人、腎臓1万2007人だった。一方で、2017年の臓器提供件数は、脳死下がわずか76件、心臓停止後は35件で、合計111件にとどまった。件数の伸び悩みは、待機期間の長期化にもつながっている。
今月は、臓器移植普及推進月間。移植について学び、理解を深めるには良い機会だ。
「自分が脳死状態になった時、臓器はどうするのか」「家族が脳死状態になったときは」「家族が移植を必要としたときは」と想像し、考えて、話題にする。そのきっかけにしたい。