「YESでも、NOでもいい。臓器移植を知り、提供についてしっかり考えて、意思表示を―」
脳死の人からの臓器提供による移植が可能となった「臓器移植法」施行から21年目。来月16日には、22年目に入る。
しかし、臓器移植への関心は、まだまだ高いとは言えない。
国際移植学会は10年前、移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすべきとする「イスタンブール宣言」を出した。移植が必要になったとき、助け、助けられる体制は構築・維持できるのか。われわれ一人ひとりにかかっている。
「意思が決まらない」「後で記入しよう」で85%が意思表示せず
2017年度の「移植医療に関する世論調査」によると、臓器移植に「関心がある」と答えた人は56.4%。43.6%が「関心がない」と答えた。関心があると答えた人の割合は、男性よりも女性が高く、年代別に見ると、40代が高い関心を持っていた。
しかし、臓器提供の意思の記入状況をたずねた設問では、「記入していない」が85.2%。理由として「自分の意思が決まらないから」あるいは「後で記入しようと思っていたから」を挙げた人が25.4%と最も高く、「臓器提供や臓器移植に抵抗感があるから」( 19.9%)、「臓器提供には関心がないから」( 17.0%)と続いた。
「家族などと臓器移植や臓器提供の話をしたことがあるか」との質問には、「ない」が64.2%。「ある」の35.4%に大きく差をつけた。
家族と話題にしたことはあるものの、書面による意思表示をしていないという関東地方の60代女性は、「『死』について語ることに、なんとなく抵抗感がある」。九州に住む40代男性は、「臓器提供、どうしようか、と思っても、そこで思考が止まる。家族と話したこともない」と語った。
もうすぐ臓器移植普及推進月間仲間と話すきっかけに
日本臓器移植ネットワークによると、8月31日現在で移植を希望して登録している患者の数は、心臓で711人、肺で340人、肝臓で334人、膵臓213人、小腸3人、腎臓1万2085人。2017年の臓器提供件数は、脳死下76件、心臓停止後35件の合計111件。待期期間も長くなっている。
来月10月は、臓器移植普及推進月間。「自分が脳死状態になった時、臓器はどうするのか」「家族が脳死状態になったときは」「家族が移植を必要としたときは」と想像し、考えて、話題にする。そのきっかけにしてほしい。
九州・沖縄の移植施設(2018年6月21日現在)
福岡
- 九州大学病院(心・肝・膵・小腸・腎)
- 福岡大学病院(肺・腎)
- 久留米大学病院(腎)
- 済生会八幡総合病院(腎)
- 福岡赤十字病院(腎)
- 小倉記念病院(腎)
- 聖マリア病院(腎)
佐賀
- 佐賀県医療センター好生館(腎)
- 佐賀大学医学部附属病院(腎)
長崎
- 長崎大学病院(肺・肝・膵・腎)
- 長崎医療センター(腎)
熊本
- 熊本大学医学部附属病院(肝・小腸・腎)
- 熊本赤十字病院(腎)
大分
- 大分大学医学部附属病院(腎)
宮崎
- 県立宮崎病院(腎)
鹿児島
- 鹿児島大学病院(腎)
沖縄
- 沖縄県立中部病院(腎)
- 琉球大学医学部附属病院(腎)
- 八重瀬会同仁病院(腎)
- 友愛会豊見城中央病院(腎)