神戸大学医学部附属病院
眞庭 謙昌 病院長 (まにわ・よしまさ)
1990年神戸大学医学部卒業。米メモリアルスローン・ケタリングがんセンター、
神戸大学大学院医学研究科外科学講座呼吸器外科学分野教授、
同医学部附属病院副院長などを経て、2021年から現職。
特定機能病院、高度急性期病院として医療の質、安全性を守り抜き、医療人の育成、研究開発を推進する眞庭謙昌病院長。新たなグランドデザインづくりが進む病院の現状と展望を聞く。
産学官連携で切り開く先進的がん医療
2020年、神戸ポートアイランドにある神戸医療産業都市で、産学官連携で医療機器分野のイノベーションを目指す「神戸未来医療構想」が始まった。「実証実験の拠点となるのが『神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)』です。リサーチホスピタルとして研究者やスタートアップ企業との協働を進めています」
同年、ICCRCでは国産第1号となる手術支援ロボット「hinotori」での手術がスタートした。「21年3月には本院の泌尿器科にも導入。前立腺がん手術の実用化を目指して、引き続き研究開発を進めていきます」
さらに7月には、「光免疫治療センター」を開設した。「第5のがん治療法と呼ばれる光免疫療法は今、始まったばかりです。その他の研究も含め、市や企業と連携を密にして次世代のがん拠点を目指したいですね」
期待の根本にあるのは、患者により負担の少ない治療をと願う呼吸器外科医としての思いだ。「肺がんに対する内視鏡下手術やロボット支援下手術を積極的に進めてきました。不安の大きい患者さんにとって、低侵襲治療は安心感の一つになり得ます。福音をもたらす重要な研究テーマとて、これからも注力していきます」
臨床研究と地域医療を次のステージへ
「『先進医療の開発と推進』は、理念の一つ。臨床研究の充実は、重要な柱です」。その実績が認められ、21年4月には全国で14番目となる臨床研究中核病院として承認された。「医師主導治験も含め、地域で中心的な役割を担うことになります。臨床研究推進センターを軸に、新しい医療技術の実用化や今ある技術の改良を進めます」
一方、地域医療の充実に向けては、20年に兵庫県と共同で始めた疾病別医療需給分析事業に注目している。「協力病院からDPCデータを集めて分析し、フィードバックする取り組みです。県は診療の実情を把握でき、各病院は全体での自院の立ち位置を知ることができる。新型コロナによる受診状況の変化も、明らかになってきました」
今後も、病院長直属の情報分析推進室を中心に作業を進め、地域での議論に活用していく。「私たちが果たすべき役割もより明確になるでしょう。課題にしっかり向き合っていきます」
ビジョンを掲げてさらに前進
病院長として最も大切にしたいのは、職員とのコミュニケーションだ。そこで始めたのが、院内ラウンド。週に1回、1時間から1時間半かけて病棟などを順番に回る。3〜4カ月で1周できる計画だ。「この設備を直してほしいなどの要望がその場で聞けます。ラウンドを続けることで、忌憚(きたん)のない意見が聞けたらと思っています」
毎週10分弱のビデオを収録し、院内専用ウェブサイトでオンデマンド配信する取り組みも始めた。題して、「病院長の月曜朝礼」。視聴者が増えるよう、工夫していきたいと語る。
6カ年中期計画の最終年度を迎えた今、準備しているのは病院の新たなグランドデザインだ。「5年、10年先を見据えたビジョンです。院内でのパブリックコメントがまとまれば、近いうちに発表できるでしょう。戦略室も新設し、実現を目指します」。新たな指針を掲げて、病院はさらに進化する。
神戸大学医学部附属病院
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