麻酔科医の視点で新たな一手を打つ

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公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立市民病院
北村 俊治 管理者兼病院長(きたむら・しゅんじ)

1979年横浜市立大学医学部卒業。
横浜市立大学附属病院、横須賀市立市民病院麻酔科診療部長、同副病院長などを経て、
2020年7月から現職。

 横須賀市立市民病院は1963年の開院以降、三浦半島西部の地域医療を担ってきた。2020年7月に就任した北村俊治管理者兼病院長は麻酔科の専門医。手術室をマネジメントしてきた経験を、病院運営に生かしていく。

大局的な視野で病院のあり方を模索

 麻酔科を選び、専門医としてキャリアを積んだ。「当時、麻酔科は『外科系の手術を手伝う』という認知度しかありませんでした。それでも、麻酔はさじ加減一つで術中術後の状態が変わってしまう。非常に面白みを感じました」。小所帯の医局員たちが協力し合う姿を目の当たりにして共感を覚えたのも、選んだ理由の一つだった。

 経験を重ねながら、麻酔をかけるだけではない術中の役割にも気付いた。「主治医が何をし、看護師がどのようなサポートをしているかを、麻酔科医は患者さんを見ながらも、全体をパースペクティブに捉えてマネジメントをする役割があると思っています」

 今度は、管理者として病院をマネジメントする立場だ。人口減少が進み、三浦半島東部地区に比べて、交通インフラも脆弱(ぜいじゃく)なのが西部地区の病院。「どうやって効率的に医療資源を使うか。複数の因子が交錯する中でどこに落とし所を見つけるのか。地域の実情に合った、コンパクトな病院のあり方を模索していかなければいけません」と、病院のあるべき姿を追求する。

 そこに働き方改革の波も押し寄せる。「医師は患者さんのために、ある意味自分を犠牲にして不規則に仕事をしますが、時間外勤務の制限などがあり、ジレンマに陥ってしまいます」。使命感と制度のはざまで苦悩をにじませつつ、「若い医師は自分のモチベーションをいかにコントロールするかが大きな問題になると思います」

チームプレーで命を救う

 横須賀市立市民病院に赴任したのは1987年。「他の診療科の先生との交流や連携でチームプレーがうまくいくことを発見できました。経験を積んでいく中で良い病院だと感じました」と根を下ろし、麻酔科医長、科長、診療部長などを歴任してきた。

 同時に、前任の管理者でもある久保章氏と強い絆がある。中学・高校の先輩に当たる久保氏は、消化器や一般外科を専門分野としており、麻酔科とはあうんの呼吸で施術。管理職になって以降も、補佐役を務めた。 指定管理者制度導入の変革期や、医師確保がスムーズに進まない時期などの難局を二人三脚で克服。「久保先生と一緒に、落ち込んだ時期から少しずつ現在の状態まで持ってきました。私もサポートできたのではないかと思っています」と振り返る。

自由に意見できる風通しの良い組織へ

 現在も課題が山積している状況だが、輪をかけるように新型コロナウイルス感染症の影響が直撃。第2種感染症指定医療機関でもあるため、70床を新型コロナ専用に転用して患者を受け入れた。

 それに伴って受診控えも加速。「入院患者は約20%、外来患者は約30%減。収支をいかに立て直していくかが最大の問題です」と頭を悩ませる。

 それでも「三浦半島西部地区でのこの病院の役割は大きいものがあります。なくなれば地域の皆さんが困るため、ぜひ残さねばという使命感があります」

 そもそも医師を志したのは、「努力して特殊な資格を得て、悩める患者さんの命を救いたい」との思いを募らせたのがきっかけ。麻酔科医として日夜問わず緊急手術に対応し、それを実現してきた。医師を目指した最初の思いを忘れず、逆境下でも打開策を探りながら突き進む。

公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立市民病院
神奈川県横須賀市長坂1ー3ー2 ☎046ー856ー3136(代表)
https://www.jadecom.or.jp/jadecomhp/yokosuka-shimin/

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