鳥取県医師会 会長 渡辺 憲

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 あけましておめでとうございます。本年、2021年の元旦は新型コロナウイルス感染症対策の厳戒態勢のもとで迎えられたことと存じます。まさに、地域医療を守り、地域住民の健康を支える取り組みを社会とともに行う第2ラウンドの始まりでもあります。

 コロナ感染症の状況としては、当県は累積感染者数としては全国で最も少なく、2020年12月18日の時点で68人、人口1万人に対して1・2人であり、全国における19万3700人(人口1万対15人)に比して、約12分の1の発生比率にとどまっております。

 しかし、中国四国地方が2020年10月頃まで感染者数が比較的少なかった状況が、11月以降、急速に増加に転じたことを考えると、当県においても、緊迫感をもった対応が必要です。

 幸い当県では、コロナ感染症の早期診断を行う診療・検査医療機関としてすでに290を超える医療機関が稼働しており、入院病床も313床(人口万対5・7床)が確保されています。これらにクラスターの発生を防ぐ医療機関を含む地域における取り組みを合わせ、新年早々から1年間を通して県民の健康を守っていきたいと考えております。

 ワクチン、治療薬もようやく具体的な動きが伝わってきて、収束にむけた長いトンネルの出口が仄見え始めてきました。しかし、遺伝子変異の起きやすいRNAウイルスである新型コロナウイルスの性質から、収束に向かう道程は容易なものではなく、ウィズ・コロナとポスト・コロナが混在した社会がかなり長期にわたって続く可能性も指摘されています。

 感染症対策は、今後の地域医療における大きな柱として、地域医療構想、地域保健医療計画に盛り込まれる予定です。また、コロナ感染症の影響を受け、縮小した保健、医療部分の立て直しを図っていかなければなりません。

 さらに、厳しい経済状況、社会的孤立などから昨夏以降、自殺者の増加が報告されており、住民の心のケアも、地域医療の重要なテーマとなっております。

 まずは、コロナ感染症を地域の医療ネットワークにおいてしっかりと対応し、重症化させないことが重要です。さらに、地域医療の底力が試される状況は今年一杯続く可能性もあります。当県出身の世界的経済学者・宇沢弘文氏は、医療を時の経済状況に左右されてはならない「社会的共通資本」と表しました。まさに、本年は医療の価値を住民とともに高める1年になるのではと思います。

 本年が皆さまにとって希望溢れる年となりますよう、祈念いたします。

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