2020年の年頭にあたり、ごあいさつを申し上げます。
さて、群馬大学医学部附属病院においては、腹腔鏡下肝切除術等に係る一連の死亡事例が問題となって以来、5年余にわたって医療安全の徹底等、病院改革に取り組んできました。皆さまに多大なご迷惑、ご心配をおかけしたことを改めてお詫びしますとともに、たくさんのご支援をいただいたことをこの場をお借りして御礼申し上げます。
2019年4月に特定機能病院に再承認され、7月には都道府県がん診療連携拠点病院に再指定されました。また、11月には病院機能評価「一般病院3」の認定を受けました。当院の提供する医療に対して、一定の評価をいただけたものと一安心しています。
しかし、医療安全やそれを担保するための医療の質にゴールはなく、維持・向上に向けて継続的に努力していかないとすぐに劣化してしまうものです。当院はようやくスタートラインまで戻れた段階であることを肝に銘じ、新しい病院づくりに取り組みます。
具体的には、これまでに打ち出した病院改革の三本の柱である「医療の質・安全学講座の設置による研究と教育」、「先端医療の開発と倫理審査」、「地域医療への積極的貢献」を中心に、当院のさらなるレベルアップを目指して努力します。
「医療安全」に関しては、大学院の講座として「医療の質・安全学講座」を設置し、当院の医療の質・安全管理部と一体化して医療安全の確保に向けた対策などに加え、世界保健機関(WHO)との連携も通して、国際的視野に立った研究、教育を実施しています。なお、本学の保健学研究科が中心として実践してきたWHO認定の「多職種連携チーム医療教育プログラム」を応用したチーム医療の強化・実践は、当院の最大のテーマとなっています。
「先端医療」に関しては、「先端医療開発センター」を設置し、さまざまな課題に対応しています。医療事故の教訓を鑑みて、第一の任務は倫理審査としました。その他、未承認医薬品の使用の可否、保険外診療、高難度手術、リスクの大きな治療など問題のある診療行為の適応を審査するとともに、治療開始後のモニタリングを実施して、その治療が安全、適切に診療が施行されているかチェックしています。
「地域医療」に関しては、当院のほか、群馬県、群馬県医師会、群馬県病院協会等の関係団体を委員とした、「ぐんま地域医療会議」が群馬県に設置されました。ここで、群馬県地域の医療事情を顕在化し、適正な医師配置等について検討しています。
これらを中心にさらに皆さまから信頼を得られるよう本年も努力してまいります。