九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

百寿社会を見据えた研究を

百寿社会を見据えた研究を

弘前大学大学院
廣田 和美 医学研究科長(ひろた・かずよし)

1986年弘前大学医学部卒業。
米イリノイ大学シカゴ校医学部、英レスター大学医学部、
弘前大学医学部副学部長、同附属病院病院長補佐などを経て、2020年から現職。
弘前大学教育研究院医学系長、同医学部長兼任。

 2020年4月1日から医学研究科長兼医学部長を拝命しました麻酔科学講座教授の廣田和美と申します。1959年千葉市生まれ、出身高校は千葉県立千葉高校です。小さい頃から、北里柴三郎、野口英世、シュバイツァー、エジソンなど研究者の伝記をよく読み、研究好きで、夏休みの宿題として鈴虫の観察研究、顕微鏡下での花粉のスケッチ、地層の研究などを行っていました。

 地層の研究では、各所の崖に出掛けては各地層の高さを測り、メスシリンダーに各層の土を入れて断層のミニチュアを作ったり、各層の土に種をまいて発芽率や成長した葉の形状の違いを比較したり、ミミズがどの層の土を一番好むか研究したりしていました。その研究成果に対して、千葉市から科学賞を頂いたことを覚えています。

 将来は科学者になろうと思っていましたが、最初に入った早稲田大学理工学部で授業を受けているうちに、自分には大きな研究成果を上げる能力はないと実感。一日一日をもっと有意義に過ごしたいという思いから、医師になろうと弘前大学医学部に入り直しました。

 卒業後、弘前に残った理由は、雄大で美しい岩木山があり、歴史があって落ち着いた雰囲気のある弘前を気に入ったためです。

 スポーツは見るのは何でも好きで、する方は中高大一貫して軟式テニス部に所属し、青春時代の大半を軟庭に費やしました。現在は医学部ソフトテニス(旧軟庭)部顧問をしています。

 自身の研究では、集中治療室でぜんそく重責発作患者を多く治療したことから、気道平滑筋の研究を1992年米国イリノイ大学シカゴ校留学時から始め、世界初の内視鏡による直視的気道径評価法を開発し、評価を得ました。

 1995年英国レスター大学留学から、全身麻酔機序などの神経科学研究に研究の主体が移りました。2007年生まれの子供の寿命中央値が107歳との予測が出たように、百寿社会はすぐそこです。一方、健康寿命は平均寿命より短く、健康上問題のある期間が人生の最後10年近くあるため、その時期は手術も多くなると予想されます。

 高齢者に健康で幸せな人生を送ってもらうためには、安全で回復も速やかな周術期管理が必要となることから、麻酔科医はそれを実現するための研究が必要です。私自身も百寿社会を見据え、術後認知機能障害、老人で多い鬱(うつ)を中心に研究をしています。

 最後に医学研究科長の使命として。今まで国大協病院経営小委員会専門委員や病院長補佐を務め病院経営を学び、日本学術振興会学術システム研究センターでは、専門研究員として日本の学術全体の勉強をしてきました。さらに、欧米と東アジア各国の大学麻酔科と積極的に交流。英国王立麻酔科協会特別会員ならびに米国大学麻酔科協会正式会員に選出いただいたのもその表れと思っています。これらの経験を生かして、歴代の研究科長が担ってきた地域に根差した教育、診療、研究のさらなる発展を目指す所存です。

 2013年文科省に採択された革新的イノベーション創出プロジェクト(COI STREAM)は、弘前市岩木地区で展開してきた「岩木健康増進プロジェクト」で得られた健康ビッグデータを解析し、認知症・生活習慣病などの早期発見、予防法の確立を目指しています。これは、私が目指す百寿社会を見据えた研究にもつながる内容です。この事業を成功させ、すでにある産学官民連携の一大プラットホームを発展させ、〝Post COIプロジェクト〟につなげたいと考えています。

 私一人では何もできませんが、医学研究科が一つとなって、同じ目標に向かって進むことで達成できると信じております。新型コロナウイルス感染症で混沌(こんとん)とした情勢が続きますが、今後とも精進してまいりたいと思います。

弘前大学大学院医学研究科
青森県弘前市在府町5 ☎️0172-33-5111(代表)
http://www.med.hirosaki-u.ac.jp/

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