現場の声拾い上げ 「よりよい病院」に

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独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院
三上 容司 院長(みかみ・ようじ)
1983年東京大学医学部卒業。
同大学整形外科、横浜労災病院整形外科部長、同副院長、
同運動器センター長などを経て、2021年から現職。

 働く人のための「勤労者医療」を核に、地域の総合病院として高度医療、救急医療に取り組む横浜労災病院。4月に院長に就任した三上容司氏は、現場の声を拾い上げ、職員が誇れる病院の運営を目指している。



理念の追求とボトムアップ図る

 「当院をもっとよい病院にしたい」と抱負を語る三上氏。三上氏が思い描く「よい病院」とは、職員が生き生きと働ける病院、自身の家族や大切な人を「ぜひ受診させたい」と思える病院だ。それらを、病院のスローガンである「みんなでやさしい明るい医療」の追求と、ボトムアップの組織運営で実現する。

 スローガン自体は20年ほど前からあったが、職員にあまり浸透していないように感じていた。その理由は、スローガンに込められた意味を真に理解している人が少ないからだと考え、キーワード別にかみ砕いて掲げることにした。「みんな」はチーム医療、「やさしい」は患者中心、「明るい」は職員が明るく透明性が高いことを示す。それぞれの意味を併記し、院内報で紹介したり、会議の場などで繰り返し伝えたりしている。

 病院は元来、医師や看護師ら専門職の集まりで、組織が大きくなるほど各部署の専門性や独立性が強まり、縦割りの弊害が生じやすいと捉えている。そこに改めて「みんなでやさしい明るい医療」という横串を通すことで、患者一人一人のニーズに応じた「専門職連携」を推進しようと考えている。


現場の声を聞く仕組みづくり 

 「専門職連携」の推進には、専門職同士がしっかりと情報共有できる環境が不可欠だ。まずは診療部長の会議や医局会など、既存の会議体を活性化させていく。

 一方、メディカルスタッフや一般職など現場の声を直接聞く機会を設けた。前院長の頃にもあったが、コロナ禍で中断していた。院長就任を機に「院長ミーティング」と銘打って再開。各部署の要望や意見を吸い上げ、職場環境の課題解決に努めている。

 三上氏自身、「トップダウンは今の時代にあまりそぐわない」と考えている。デジタル化の進展に伴い、社会は今までにないスピードでどんどん変わっていく。「私一人で社会の変化を捉え、意思決定するのは難しい。リスクも非常に高い」

 トップダウンではなく、現場の議論や連携を促すことで、ボトムアップの意思決定を目指す。「当院には優秀な専門家がたくさんいる。彼らの知恵を借り、職員との対話を通して意思決定するプロセスを大事にします」


意見出やすい環境チーム医療で醸成

 チーム医療では「緩和ケアチーム」「糖尿病指導チーム」など10チームが活動している。このうち、「倫理コンサルテーションチーム」は、医師や看護師、外部の研究者ら10人ほどで構成され、臨床でのあらゆる倫理的問題に対処している。

 治療方針を巡る価値観の相違などで、患者やその家族にどう対応していいか分からない場合、職員は電子カルテ上のシステムですぐに相談できる。相談を受けたチームは、そのとき動けるメンバーで話し合い、相談者を交えたカンファレンスを開くなどして、解決へ向けたアドバイスをする。

 チームのメンバーは、日本臨床倫理学会などが主催する研修を受けており、上司や同僚ら身近な人に話せない場合でも、安心して相談できる体制を整えている。相談者からは「相談してよかった」「安心できた」といった感想が寄せられるという。

 一般的に、大きな組織ほど、その末端にいる人は意見やSOSを上げにくい。「意見することをためらう雰囲気があってはいけない。さまざまなルートで現場の声を拾っていきます」



独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院
横浜市港北区小机町3211 ☎045-474-8111(代表)
https://www.yokohamah.johas.go.jp/

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