「医療・介護費亡国論」
2020年は大変な年になってしまいましたね。2019年の黒字の病院は公私合わせて30%程度であるというデータが発表されていました。
2001年4月から2006年9月にかけての小泉政権時代に小泉首相が言ったことは、「医療費亡国論」でした。それ以降、診療報酬や介護報酬は上がるどころか下がる一方でした。一見、表面的には少し上がったと見えても、実質は下がっていたのです。民主党政権となって、少し上げていただきましたが、2019年までにすでに医療・介護現場では厳しい経営が続いていて、ボディーブロー
のように効いてきて、その体力はどんどん低下してきていたのです。
唯一サービス需要の多いところのみを選択的に運営することによって、効率的に利益を上げ続けている民間大会社などがあることが例外であり、年度集計を見ても、3年に1度の介護報酬改定は、どのサービスもそれぞれの利益率を見ても、平均して1~3%の利益しかありませんし、サービスによっては30~50%が赤字であり、例えば介護老人福祉施設(特養)でもわずか1~2%の利益で、果たして40年経過して建て替えができる資金が残っているでしょうか。答えは「NO」です。
労働人口はどんどん減少していくし、人件費は上がり続けることはもはや確定的です。現在、特養の延べ利用者1人1日あたりの収入は、約13000円ですから、100人定員の施設では、年間約5億円の収入となります。このうち利益率2%として約1000万円/年の利益が40年間で約4億円です。現在、100床の特養を新設する場合、総建築費は17億円以上かかります。
これらの利益全てを40年後の建て替えに使うとしても、減価償却費を40年間すべて貯畜していたとしても、とてもじゃありませんが、資金が足りません。しかも40年後の建築費はさらに高騰しているでしょう。すでに運営継続が不可能な報酬設定となっていることが、実は明らかにされていないのです。
さらにその上に患者数や入所者数の減少、通所・訪問サービス利用者の減少と、医療・介護産業の未来は厳しいものです。
さらに追い打ちをかけるように、2020年世界中に悪影響をもたらした新型コロナウイルス感染です。日本政府は国民の健康長寿を進めて守っていくという大前提を放棄しているに等しいのです。その中のコロナでの現場の疲弊は致命的に深刻です。
政府は国民の長寿で健康で安心した生活を守ってくれないのでしょうか。いったい何に一生懸命なのでしょうか。