九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

専門病院として進化し続ける

専門病院として進化し続ける

社会福祉法人恩賜財団済生会 群馬県済生会前橋病院
吉永 輝夫 院長(よしなが・てるお)

1983年群馬大学医学部卒業。
同附属病院、桐生厚生総合病院、恵愛堂病院、群馬県済生会前橋病院副院長などを経て、
2020年から現職。

 群馬県済生会前橋病院は1943年に診療所として開設。1958年に入院病床を有する病院に昇格し、1974年からは利根川西部地域の拠点病院として上新田町に移転し現在に至っています。地域の救急医療ニーズに対応するとともに、地域医療支援病院として、かかりつけ医との機能的な連携を図っています。

 がん診療連携推進病院として専門医療に努める一方、災害拠点病院として地域の災害対応・防災活動にも尽力。臨床研修指定病院としてもほぼフルマッチを続けており医育機関としての役割も果たしています。

 就任半年前の2019年9月末、再編統合問題がクローズアップされ、いわゆる424病院に当院がリストアップされました。前橋市は急性期病院の激戦区です。当院は総合病院ではないものの専門性の高さが特徴で、それらの分野の治療に関しては周囲からも高い評価を受けており、寝耳に水の報道にはあぜんとするばかりでした。

 これに対する意見は、ホームページなどに詳しく掲載しており、当院の担っている役割や実績からして再編統合には該当しないことを説明しています。

 骨髄移植などの血液疾患、膵がんを中心としたがん診療は、前橋だけでなく県内全域を支える診療実績があります。糖尿病関連診療・カテーテル治療・透析・手の外科などの実績もあり、具体的方針決定の場である地域医療構想会議でも十分理解をいただいています。この件は3月までに一定の方針が決定されるはずでしたが、新型コロナの影響で審議は先送りになっています。

 新型コロナウイルス感染症は、医療機関はもちろん地域社会全体に計り知れない影響をもたらしています。執筆時点では、自粛要請も徐々に解除され社会生活は正常化されつつありますが、いわゆる「3密」を回避し、ソーシャルディスタンスを確保するなど「ウィズコロナ」の社会様式への戸惑いや困難に直面している最中です。

 病院では、個人防護具の不足や検査体制もまだ改善されておらず、第二波への備えは心もとない状況です。当院に限った話ではありませんが、病院経営的にも新型コロナの影響は甚大で、一般企業同様に「アフターコロナ」に向けた変革が求められています。

 わずかな間に、再編統合問題と新型コロナの二つの波に見舞われましたが、あえてポジティブに捉えれば、専門病院としての役割を高め、地域医療における当院の立ち位置を再認識するチャンスを与えられたと考えられなくもありません。

 困難に立ち向かうべく職員一同の士気は高まっており、これまで以上のパフォーマンスを期待しています。

 専門病院として進化して行くためには、日々のバージョンアップが欠かせません。専門病院であり続けるということは、変革を恐れずに変わり続けることでもあります。中長期的な視点で当院の長所を伸ばしていければと考えています。

 私自身、かなり狭い専門分野を担当しておりましたので、院内に限らず病院を超えての医療連携・チーム医療に支えられてきたと意識しています。専門家が何人集まってもそれをつなぎ合わせる有機的な医療連携が無ければ医療は成立しません。そしてそれは患者中心の医療として設計されていなければ、全体のベクトル軸を合わせることはできません。結局のところ、専門性を高めることとチームの連携を担保すること、患者中心の医療は一連のことと理解することができます。

 当院はQCサークル活動など、医療の質改善に取り組んできた歴史もあり、いわゆる現場力には自信があります。チーム医療の拡充・連携強化で病院力を高めることが私に課せられた大きなテーマと考え、今後ますます頑張っていきたいと考えています。

社会福祉法人恩賜財団済生会 群馬県済生会前橋病院
前橋市上新田町564-1 ☎️027-252-6011(代表)
http://www.maebashi.saiseikai.or.jp/

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