地震復興を経てステップの年に

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医療法人社団順幸会 阿蘇立野病院
片山 幸広 院長(かたやま・ゆきひろ)
1998年熊本大学医学部卒業。
熊本赤十字病院、国立病院機構熊本医療センター、
社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院などを経て、2021年から現職。



◎熊本地震から復興半ば

 2020年7月に赴任し、1年2カ月が経ちました。これまでの急性期病院での慌ただしい毎日から一転して、地域医療の中で戸惑うことも多い日々でしたが、ようやく落ち着いてきました。

 阿蘇立野病院は熊本地震で甚大な被害を受けて、まだまだ復興の半ばだと考えています。国道や新阿蘇大橋の開通などインフラの整備は進んでいますが、病院裏の山肌や、阿蘇大橋の残骸など、地震当時を忍ばせる風景が残っています。その風景を見ていると今でも、地震直後に何も手助けできなかった気持ちが思い返されます。

 阿蘇地域、特に南阿蘇地域にとっては貴重な病床を有する医療機関です。地域住民の皆さんのためにもしっかりと復興することが大事だと考えています。4月から院長に就任し、改めて腰を据えて、仕事をしていく所存です。まだまだ40代の若輩ではありますが、その分、体力・精神力は余裕があります。地域の皆さんや職員に「ありがとう」と言っていただける仕事ができればと思います。


◎ステップの年に

 赴任直後は私を含め3人の常勤医でしたが、21年6月から常勤医4人態勢で診療を行っています。通常の一般外来を行いつつ、救急車への対応も断らずに対応できる体制となってきました。8月から病床を47床に増床。まだ地震前よりは少ない病床ですが、現在の職員で機能しうる病床数です。

 私と理事長が心臓血管外科出身、循環器内科の常勤医がおり、循環器疾患についてはある程度専門的な管理ができる体制です。ここに消化器外科の常勤医が加わり、これまで予約以上は難しかった消化管内視鏡検査を臨時でも対応できるようになってきました。外科医が3人で、今後は全身麻酔とまではいかずとも、小手術を行っていく体制ができればと思います。私としても血管系の小手術を考えています。

 新型コロナウイルス感染者の入院診療は行っていませんが、発熱者外来やワクチン接種などの対応が余裕をもって行えるようになってきました。連日、ワクチン接種を自治体や地域医療機関と連携して行っています。65歳以上への接種はある程度終わっており、若年層への接種を行う段階となってきています。8月からは休日の接種を他の地域医療機関と連携して行っています。


◎コミュニケーションのさらなる充実を

 私よりも年長の、地震以前からこの病院をよく知っている幹部職員がおり、貴重な人材です。この幹部職員とよく話をしながら進めていくことが重要だと考えています。私がこれまで専門としてきた循環器領域でも、この数年、チーム医療の重要性をガイドラインでも示してきています。医師、看護師だけでなく、介護士、社会福祉士、医療秘書、事務方、介護施設職員、地域のケアマネジャーを含めて患者さんに当たること。その上で職員同士のコミュニケーションを図っていくことが大事だと思います。

 コロナ禍がこのコミュニケーションに少なからず影響を与えていることは確かです。職員同士での親睦会などで互いを知ることができず、どこかちぐはぐな関係になっていると思います。私自身、これまで世代の離れた若い仲間とは夜遅くまで飲み歩いて、騒いで、親睦を深めてきたため、十分なコミュニケーションがとれていないのではないかと不安になっています。

 医療という仕事の中で、真摯(しんし)さは大事ですが、職員同士笑顔で会話できることは、その雰囲気を見た患者さんとその家族にも良い影響を与えます。笑顔で会話できるよう職員を信じて、ともに頑張っていきたいと思います。「何かあったら立野病院」のフレーズを年頭に思いつきましたが、地域住民の相談相手になれる病院を目指して進んでいきます。 



医療法人社団順幸会 阿蘇立野病院
熊本県南阿蘇村立野185-1 ☎ 0967-68-0111(代表)
https://asotateno.or.jp/

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