九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

地域医療の貢献と安定経営に着手

地域医療の貢献と安定経営に着手

山陽小野田市民病院
藤岡 顕太郎 院長(ふじおか・けんたろう)

1984年山口大学医学部卒業。
米テキサス州立大学、山口大学医学部附属病院第一外科講師、
山陽小野田市民病院副院長などを経て、2020年から現職。

 新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の事態の中で就任。検査・治療体制の組織づくりに追われながら、病院経営の改善に着手する。現状を分析して具体的な目標を定め、数年後の達成を目指している。

感染拡大の中で就任 病棟再編に着手

 2020年4月1日に院長就任。政府から緊急事態宣言が発令される直前というまさに新型コロナウイルス感染拡大の真っただ中であり、大変な困難を伴ったスタートであったことは想像に難くない。

 「まずは公的病院として検査・治療体制を整えることが最優先でした。医師や看護師、職員全員が協力しながら、いかにして組織を編成していこうかと腐心しました」

 経営的なダメージも見逃すことはできない。2月以降、入院外来患者数は前年比で10~15%程度減少。病院経営にも大きくのしかかってきた。

 「2015年度以降、山陽小野田市の議会から経営を改善するように勧告を受け、2019年に厚生労働省から出された公立・公的病院の再編や統合の検討が必要とされたリストに当院の名も含まれていました。それを受けて、急性期病棟215床の一部を地域包括ケア病棟に転換することに決定。2020年4月から準備を進め、7月から7階の55床を『退院支援病棟』として稼働を開始しました」

 同病棟は入院療養を続ける患者の在宅復帰を目指すもので、一部レスパイト入院も受け入れている。9月の時点で病床稼働率は90%を超え、その結果、毎月800万円程度の増収となり、経営の改善に向けて早速効果が表れているという。

経営安定のために新たな取り組みへ

 病院経営のさらなる改善に向けては、この半年間に外部の専門家を参与として招聘し、現状の分析を行った。その結果いくつかの課題が洗い出され、問題解決に向けた対策にも着手している。「大きくは二つあり、厚生労働省が推奨しているDPC(診療群分類包括評価)の導入と、病院機能評価の受審を考えています。今まであまり検討されてきませんでしたが、外部からの客観的な評価を受けることによって信頼感を高め、副次的な効果があるのではないかと期待しています」

 その他にも、10対1から7対1への看護師配置基準の見直しや適正な病床数の再検討などを行っているという。これらの取り組みはまだ緒に就いたばかりだが、「今後はより具体的な目標を掲げて、2~3年後をめどに達成していきたい」と、意気込みを語る。

地域医療機関との連携をさらに深化

 山陽小野田市民病院は、もともと旧小野田市と旧山陽町の合併に伴い双方の市民病院を統合し、2014年に現在の新病院が建設された。建築物の環境性能を評価するCASBEEで最高のSランクに認定されるなど、高度な設備・施設をそろえている。医療資源が限られた地方都市の公的病院では、近隣の病院と連携しながら、地域住民のニーズを満たす医療サービスの提供が求められている。

 「当院の特徴として、透析センターと産婦人科のスタッフの充実があります。このような強みを生かしながら、近隣の医療機関と連携して、地域の医療を支えていきたい」

 地域住民にとってかかりつけ医である、開業医との連携にも力を入れている。

 「地元医師会の会合などに参加できればいいのですが、院長に就任してからは新型コロナの影響でまったく開催されていません。今は私の方から開業医の先生を訪問してコミュニケーションを取るように心掛けています」と、自らの足を使った交流を心掛けている。

山陽小野田市民病院
山口県山陽小野田市東高泊1863ー1 ☎️0836ー83ー2355(代表)
https://sanyo-onoda-city-hosp.jp

記事に関する感想・コメントはこちらから

このフォームに入力するには、ブラウザーで JavaScript を有効にしてください。
名前
メニューを閉じる