新潟県厚生農業協同組合連合会 柏崎総合医療センター
相田 浩 病院長(あいだ・ひろし)
1990年秋田大学医学部卒業。
新潟大学医学部附属病院(現:新潟大学医歯学総合病院)、秋田赤十字病院、
米ハーバード大学留学、新潟県厚生連上越総合病院副院長などを経て、2019年から現職。
設立から80年以上の歴史を持つ柏崎総合医療センター。高齢化が進む地域における中核病院として、人員の確保、次世代のためのシステム改革など、取り組むべき課題も多い。相田浩病院長が描く、今後の病院の姿は。
看護師の母の姿を見ながら
相田病院長の母親は看護師だ。幼い頃から看護師の仕事の大変さを、常に見て育ってきた。母に連れられて、病院に行くことも多く、そこで医師という仕事に出会う。
地元の新潟を離れ、大学進学で秋田へ。卒業後、新潟に戻り、産婦人科を選んだ。「実は母親から、産婦人科医が足りないという話を聞いたことがきっかけでした。何よりも、産婦人科は〝おめでとう〟の言葉が似合う。新潟大学には当時、NICU(新生児集中治療室)があり、最先端のことも学べると感じました」
地域医療の厳しさを実感
新潟県厚生連の上越総合病院で副院長を務めた後、同じ厚生連の柏崎総合医療センターへ。就任してすぐ、地域医療が抱える問題に直面した。
「一つは電子カルテ。厚生連の病院では完全電子カルテ化を進めていますが、順番を待っていると5年ぐらいかかってしまいます。もっと早く電子カルテ化をしたい理由は、研修医など若い人にアピールしたいから。次の世代のために、予算を考慮しながら、今あるシステムでの運用を考えています」
そこには、慢性的な医師や看護師の不足という課題が隠れている。「医師については大学の医局にお願いしていますが、もっと深刻なのが看護師不足です」
看護師を含む職員の3分の1は地元出身ではないという。そこで相田病院長は、地元の人が働いてくれる職場を目指した。
「就任後、まず柏崎市役所に行って、『地元の人が働いてくれる職場を目指したい』と話をしました。看護師志望の高校生が進学で離れても、再び戻ってくるように奨学金のようなものをつくりたいと提案しています」
高校に働きかけるだけでなく、小学校や中学校でも医療職をアピールして、若いうちから意識付けを行っていきたいという。すぐに結果は出ないが、いずれ地元の大切な人たちのために働きたい人たちが育つことを期待している。
「柏崎市は県内でも高速道路以外の交通網の整備が遅れています。それもあってか、故郷に帰りたい、都市部に移りたいと、離職してしまう職員が少なくないのです。だからこそ、この地域のために頑張りたい人を確保したいと思っています」
医師の高齢化への懸念も
地域の開業医が高齢化しており、新規開業もなく、あと10数年でかなり減ることが予想される。看取(みと)りができなくなり、地域医療が維持できない事態になるかもしれない。
「看護師不足、医師の偏在、働き方改革など、考えるべき課題はいくつもあります。地域の医療機関との連携をさらに強めながら、将来的には看取りまでを考えた病院づくりをしていかなければと思っています」
産婦人科医となってから大切にしているのは、「患者の近くにいること」。患者と顔を合わせ、しっかりと観察し、少しの変化にも気を配ってきた。
「今後、分娩施設がかなり集約化される可能性があります。2人目、3人目を産みたくても、分娩施設が近くになくて諦めるようなことがあってはなりません。分娩の火を絶やさないように、何かしらの方策を立てたいと思っています」
相田病院長の任期は10年。地域になくてはならないこの病院をいかに存続させていくか。「後悔しないように努力し、次の世代に引き継ぐことが、私の役割だと思います」
新潟県厚生農業協同組合連合会 柏崎総合医療センター
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