国内初の新型コロナウイルス感染症患者が確認されたのは、今年1月。その後、誰も経験したことのない難題が次々と医療現場を襲った。全国的な感染拡大、手探りでの治療、いわれのない誹謗(ひぼう)中傷、悪化する病院経営―。渦中にいた医療者たちはその時何を考え、どう対処したか。当時を振り返り、今後への提案を聞く。
政府に先んじて決断 現場の悲鳴が背中を押した
3月27日、横倉義武・日本医師会前会長は、厚生労働省で加藤勝信・厚労大臣と向き合っていた。加藤大臣を訪ねるのは、3月だけでもう何度目だろうか。
この日、大臣に手渡したのは、新型コロナウイルス感染症のワクチン開発への支援を求める要望書。一通りのやりとりを終えた後、横倉前会長はおもむろに切り出した。「政府として早く、国民に強い警告を出すべきではないでしょうか」