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QOL向上に多様な試み 目指すのは「快適な病院」

QOL向上に多様な試み 目指すのは「快適な病院」

奈良県立医科大学麻酔科学教室
教授(かわぐち・まさひこ)

1988年奈良県立医科大学医学部卒業。
国立循環器病センター(現:国立循環器病研究センター)、大阪脳神経外科病院、
米カリフォルニア大学サンディエゴ校などを経て、2012年から現職。

 周術期や術後のフォローなど、多様な側面で「長期的なQOLの向上」を見据えたチーム医療を推進する奈良県立医科大学麻酔科学教室。「笑顔」や「幸福」をキーワードにした新しい医療の創造を目指し、さまざまな試みが進行中だ。川口昌彦教授が思い描く医療のあり方を探った。

―どのようなことに力を入れていますか。

 患者さんも病院で働くスタッフも笑顔になれる。そんな快適な病院、快適な職場を目指して、「病院快適環境プロジェクト」を推進しています。

 集中治療室の壁に装飾を施してデザイン性を高くしたり、「疑似窓」を設置して外の景色をリアルタイムで映してみたり。五感を刺激するさまざまな試みを展開しています。

 11月に「パジャマdeおめかし!写真展」を開催しました。企業の協力を得て、入院・通院中の患者さんたちにおしゃれなパジャマを着用していただき、プロによるメークアップを実施。変身を楽しむ様子をカメラで捉えました。

 治療を受けている間はおしゃれを諦めるしかない。そんなイメージの払拭(ふっしょく)につながってほしいと考えて企画したものです。患者さん、職員間のコミュニケーションが活発になったと感じています。

 また、患者さんの術後の生活機能に関するコホート研究を進めています。

 術後3カ月、1年、5年、10年と長期的に経過を追いかけることで、患者さんによって回復の度合いはどのように異なるのか、術式とはどう関係しているのかなどを調査。およそ4000人のデータを収集して解析します。

 この研究で得た成果は、将来的に適切な治療の選択に役立てることができればと考えています。

─教室の強みを教えてください。

 多職種連携によるチーム医療によって、新しい医療の創出を目指しています。

 手術麻酔をはじめ、集中治療、ペインクリニック、緩和医療など、麻酔科の役割は多岐にわたります。当教室では、これらをトータルに実践・研修できる体制を目標としています。

 もちろん、関連するすべての業務を私たちだけでカバーできるわけではありません。手術の1カ月前の段階で看護師、臨床工学技士、管理栄養士など、多職種による運動や栄養、睡眠、リラクゼーション、禁煙のサポートなど、心身の状態を管理するプレハビリテーションを実施します。

 例えば高齢者はせん妄や認知機能障害など、入院するだけで心身の機能が著しく低下してしまうことがあるのです。プレハビリテーションによって手術に臨むためのコンディションを整えると同時に、術後の回復力の引き上げも期待できます。

 今後、予防医学の観点から、生活習慣を見直すきっかけなどをもっと提供できればと考えています。患者さんには、手術を「高度な健康診断」と受け止めていただき、生活を変える一歩をお手伝いできたらと思っています。

―働き方についてはいかがでしょうか。

 麻酔科でも多くの女性医師が働いています。出産前後の時期のキャリアの中断や、仕事と育児の両立などをできるだけサポートできるよう「ママ麻酔科医制度」を用意しています。

 それぞれの要望に応じて勤務時間を調整しているほか、子どものお迎えや急病の際には、スタッフが互いにカバーしています。

 この制度は時短勤務や休みやすさといった面だけでなく、ママ麻酔科医のキャリアアップを支援するためのものでもあります。研究に打ち込んだり、管理職として組織をまとめたり、希望者は当直をしたり。個々が理想とする仕事のやりがい、成長を実感してもらうことも大きな目的。環境整備をさらに進めていきたいと思っています。

奈良県立医科大学麻酔科学教室
奈良県橿原市四条町840
☎0744─22─3051(代表)
http://www.naramed-u.ac.jp/~anes/



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