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PCI補助ロボットで医師の被ばくを低減

PCI補助ロボットで医師の被ばくを低減

久留米大学病院 循環器病センター
教授(うえの・たかふみ)
1982年長崎大学医学部卒業。米アトランタ心臓血管研究所留学、
福岡市医師会成人病センター副院長などを経て、2010年から現職。
2015年から同病院副病院長兼任。

 今年4月、補助ロボット「コーパス(CorPath GRXシステム)」を使用した経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が、国内で初めて久留米大学病院循環器病センターで実施された。コーパス導入のメリットや今後の展望は。コーパス治療の第一人者である上野高史教授に聞いた。

―コーパスとは。

 コーパスは、一言で言えばPCI用の補助ロボットです。医師は、放射線を遮蔽(しゃへい)する素材に囲まれた場所で、目の前のモニターを見ながら、ジョイスティックというレバー付き入力機器を使って、ガイドワイヤーやカテーテルを遠隔操作します。

 一番のメリットは、医師の被ばく量を低減できることです。アメリカのデータでは、カテーテル寝台の脇に立ちPCIを行う場合と比較して、95%も低減できると報告されています。

 また、通常、医師は被ばくを防ぐため鉛入りのプロテクターを着用しますが、長時間に及ぶ治療で、背骨や腰を痛める人もいます。このプロテクターを着用する必要もなく、医師の身体的負担も軽減できるでしょう。

―患者さんのメリットは。

 ステントを使用したカテーテル治療は、患者さんの冠動脈にミリ単位でステントを留置する必要があります。しかし、コーパスを使えばボタン一つで位置決めができ、人の手で行うより早くできます。トレーニングを積めば、誰が行っても同じレベルの手技で患者さんを治療できるでしょう。この治療が標準化できれば、患者さんにとって、質の高い医療を受けられる機会が増えることになります。

 また、検査の際に投入する造影剤は、高齢の方などの場合、特に腎臓に負担をかけますが、治療時間が短くなれば、その分、造影剤の量を抑えることができます。

―今後の展望は。

 コーパスのことは、2015年、アメリカの学会に参加したときに偶然知りました。その後、私が会長を務めていた「日本心血管インターベンション治療学会学術集会」に展示してもらい、そこで初めて国内に紹介しました。2018年6月、国内での臨床使用が認可されて、現在は福岡山王病院など五つの施設に導入、もしくは導入予定です。

 まだ保険点数が付いていないため、コーパスを使用しても診療報酬上の手当がありません。厚労省によれば、患者さんのメリットをより明確にする必要があるとのこと。そこで、コーパスを導入する施設と連携し、市販後調査のデータを集めて患者さんのメリットを証明しようと動いています。 一方で、アメリカでは脳領域や末梢(まっしょう)動脈の領域でもコーパスを使った臨床試験が始まっています。他の領域でも使用されるようになれば、さらなる普及が期待できるでしょう。

 将来的には、コーパスを利用して離島の患者さんを治療するなど、遠隔医療に応用することも考えています。また、現在は女性医師がPCIの現場から離れる傾向にありますが、コーパスは被ばくの心配が少なくなっています。女性医師の活躍も、ぜひ期待したいですね。

久留米大学病院 循環器病センター
福岡県久留米市旭町67
☎0942―35―3311(代表)
https://www.hosp.kurume-u.ac.jp/medical/circulat/

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