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DRinCで明日につなぐ 効率的な糖尿病対策

DRinCで明日につなぐ 効率的な糖尿病対策

久留米大学医学部内科学講座 内分泌代謝内科部門 野村 政壽 主任教授(のむら・まさとし)
1988年九州大学医学部卒業。米ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院博士研究員、
九州大学病院内分泌代謝・糖尿病内科講師、
同大学大学院医学研究院病態制御内科准教授などを経て、2017年から現職。


 糖尿病の通院患者が過去最多を記録。心血管イベントなどの重篤な合併症による死亡率も高まる中、いかに糖尿病を予防し、合併症を防ぐかが課題となる。久留米大学内分泌代謝内科の野村政壽主任教授に聞いた。

―久留米・筑後地区における役割は。

 久留米・筑後地区は大規模な病院も多く、医療資源が豊富な地区です。当大学病院では、重症の患者さんの受け入れやかかりつけ医が治療方法に迷う患者さんの精査、非専門医の先生方への情報提供など、いわゆる高次機能病院としての役割を果たしています。

 わが国は超高齢社会に突入しており、認知症やロコモティブシンドロームなど、介護・福祉にとって重要な問題も糖尿病との関連が言われています。筑後地区は全国的にも高齢者の多い地域であり、関連病院や診療所と連携を取りながら、糖尿病患者さんのデータベースを構築しています。

 地域包括ケアシステムとも連動させて超高齢社会における糖尿病診療の在り方を考えていきます。データの集積から地域のニーズを的確に捉え、そのニーズに応える処方箋を出して行きたいと思っています。

 当科ではこのプロジェクトを「DR in C」と呼んでいます。1回目のデータ解析は今夏ごろまでに出る予定です。目標としては、8000人規模での解析を目指しています。

 妊娠糖尿病治療にも力を入れてきました。1型糖尿病患者の予後調査やトータルケアにおいては、大学ぐるみで取り組んでいます。 学童期の子どもを集め、研修医を含む若手のドクターや看護師たちと毎年サマーキャンプを開いています。そうした活動を通じ、患者さんと医療スタッフ双方にいい意味で学ぶ場ができていると感じています。ご家族を含む患者さんの人生にしっかり寄り添っていければと思っています。


―研究については。

 ミトコンドリアに着目した2型糖尿病の発症機序について研究しています。
 ミトコンドリアには、生命活動を支えるさまざまな役割があることは周知の事実ですが、加えて、エネルギー需給に応答し分裂、融合を繰り返す形態変化、つまり、ミトコンドリアダイナミクスにより糖の代謝恒常性維持にも関与していることが明らかになってきました。

 この過程でミトコンドリアが生産するアデノシン三リン酸(ATP)はエネルギー供給源でもありますが、一方で過栄養により過剰に産生されたATPは細胞外に分泌され、炎症を引き起こします。その結果、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症や肝臓におけるインスリン抵抗性などを惹起させ、糖尿病の発症にもつながることを明らかにしています。

 こうした発症メカニズムを踏まえ、新たな治療薬開発に取り組んでいます。現段階で開発途中の一つは、マウスによる試験で効果を確認済みですが、吸収率が問題となっています。ですから、吸収率を上げるよう修正を図っているところです。

 完成すれば、糖尿病で合併症に苦しんでいる患者さんに大変役立つ薬となることが期待されます。


―糖尿病対策の今後を。

 糖尿病の患者さんは、子どもからお年寄りまで千差万別です。それぞれのライフステージにより、必要な食事や運動、合併しがちな疾患も違います。糖尿病予防や治療において最も大切なのは、食事療法であることは言うまでもありませんが、時間栄養学的視点からの啓発も大切でしょう。高齢者の場合、フレイル対策として運動療法も肝要です。

 したがって、包括的治療が要求されます。当科では、外科系の診療科や、婦人科、小児科とも非常に密な連携をとっており、包括的診療体制が整っています。今後も患者さん一人一人に応じた個別化医療をきちんと示していきたいと考えています。


久留米大学医学部内科学講座内分泌代謝内科部門
福岡県久留米市旭町67
☎0942―35―3311(代表)
http://med.kurume-u.com/


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