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BSCを活用し病院全体のベクトルを合わせて健全経営へ

BSCを活用し病院全体のベクトルを合わせて健全経営へ

地方独立行政法人大牟田市立病院
理事長・院長(のぐち・かずのり)

1978年久留米大学医学部卒業。米ピッツバーグ大学移植外科・移植免疫学留学、
大牟田市立病院副理事長兼副院長などを経て、2014年から現職。
久留米大学内科学臨床教授兼任。

 全国の多くの公立病院が経営の難しいかじ取りを迫られている。その中で、大牟田市立病院は、健全経営を長く維持している。その要因は何か、野口和典理事長・院長にお話を聞いた。

―黒字化のきっかけは。

 2003年度から3年間の経営改善3カ年計画を策定し、経営改善に取り組みました。最終年度の2005年度に13年ぶりに黒字化。しかし、地方公営企業法の一部適用では経営改善にも限界があるとの判断から、有識者の意見を踏まえ地方独立行政法人化することになりました。

 2010年4月に独法化してからは、予算や職員定数などの面で、より迅速で柔軟な経営判断が可能に。看護師の増員による7対1看護体制への移行など、安定した経営基盤の構築に向け、さまざまな施策に取り組めるようになりました。

 しかし黒字化できたとしても、それを継続させなければ意味がありません。独立採算が基本ですので、4年ごとに中期計画、単年度ごとには年度計画を立て、市に提出・公表、期限内の実施が義務付けられています。そこでこれらの計画の立案をBSC(バランスト・スコア・カード)の手法を用い、全部署の管理職が参加する研修で行いました。

 特に4年ごとの中期計画を検討する1泊2日の合宿研修では、マーケティング戦略立案方法の一つ、SWOT分析を用いて「強み」「弱み」「脅威」「チャンス」という項目で現状の分析を行い、全管理職が情報を共有します。活発な討論から4年間の方針を決定するのです。その方針は管理職が各部署に持ち帰り、病院全体の意思統一のもとで目標達成を目指します。

 人事評価とそれに伴う給与制度も変えました。頑張った人が評価され、その評価を給与に反映します。人事評価では、管理職である所属長の目標が所属職員の上位目標となることで、病院の方針が部門や職員個人の目標にまでリンクする仕組みができたことも大きな工夫の一つです。

―医師の確保は。

 久留米大学の教育関連病院でもある当院は、常勤のうち20人ほどの医師が毎年入れ替わります。その医師を指導する側も、指導される側も、年2回の院長ヒアリングを通じて、しっかりと評価を行っています。

 評価のプロセスとその結果は行動計画書として冊子に編さん。派遣元の大学の教授へお届けしています。誰が何を頑張ったのか、何を目指したのか。公正に評価することで、大学からまた優秀な医師を派遣いただき、当院の医療サービス向上の一因となっています。

 さらに、医師から事務職に至るまですべての職員の意思を統一し、毎年度の方針を確認、達成。それぞれがPDCAサイクルを回しながら業務の質の向上につなげる仕組みをうまく取り入れたことで、病院全体が良い方向へ回り出しました。

―急性期病院の役割とは。

 大牟田市は全国平均よりも高い高齢化率を示しています。当院でも内科の患者さんの約6割が70歳以上、約3割が80歳以上。90歳以上も増えています。

 高齢者は1週間の入院でも、歩けなくなる、立てなくなる、ものを食べられなくなることも。わずか1週間~10日の間に、リハビリをどのように取り入れ、次の回復期病床がある病院や施設へ移ってもらうか、迅速かつ的確な判断が迫られます。

 例えば、高齢の患者さんで脳の血管に疾患がある方の多くは、心臓や足の血管にも異常があります。そこで2019年4月、循環器内科、脳神経外科、血管外科、脳血管内治療科を一つの病棟に集約しました。血管の病気は、この病棟ですべて対応しようという試みです。

 その他にも、症例別に病棟を再編。この再編が今後どう機能するかはまだ未知数です。しかし、さまざまな方策を検討、チャレンジすることで、患者さんにとって最善となるモデルケースを作っていきたいと思います。

地方独立行政法人 
福岡県大牟田市宝坂町2―19―1
☎0944―53―1061(代表)
http://www.ghp.omuta.fukuoka.jp/

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