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AIによる内視鏡外科手術 支援システムを開発

AIによる内視鏡外科手術  支援システムを開発


教授(いのまた・まさふみ)

1988年大分医科大学医学部(現:大分大学医学部)卒業。
大分大学医学部総合外科学第一(現:消化器・小児外科学)准教授、
米コーネル医科大学大腸外科客員研究員などを経て、2014年から現職。
日本内視鏡外科学会理事、日本消化器外科学会理事。
2020年9月世界内視鏡外科学会会長を予定。

 大分大学医学部では、世界的にも類をみないAIを用いた内視鏡外科手術支援システムの開発が進行中だ。手術という場面にAIが活用されるこの新たな取り組みについて、日本内視鏡外科学会理事も務める猪股雅史教授に話を聞いた。

―AIを用いた内視鏡外科手術支援システムとは。

 このシステムは、難度の高い内視鏡外科手術の安全性を高めるため、AIに過去のさまざまな症例をディープラーニング(深層学習)させ、手術のナビゲーションをするシステムです。術中にAIが的確な位置を示すランドマークを表示することで、より安全かつ正確な手術ができるようになることを目的としています。

 例えばレントゲン写真や胃の内視鏡カメラなどでは、すでにAIによる診断などが可能になっています。しかし、手術という動きのある場面でAIを用いたシステムは、世界的にもまだ実用化はありません。

 このプロジェクトは、日本医療研究開発機構(AMED)が主催し、当大学と福岡工業大学(徳安達士教授研究室)、オリンパス株式会社がタイアップした共同開発です。2年前にスタートしました。

―開発のきっかけは。

 当院では患者さんのQOL向上のため、内視鏡外科手術の推進を図っています。ただ、この術式は低侵襲とはいえ難度が高いため、医療事故や合併症のリスクが高まることが課題とされています。このようなリスクを減らすため、この支援システムの開発を始めました。

 若手の外科医の教育について考えていたことも一つのきっかけです。専門性をいくら磨いたとしても、一人の外科医の知識や経験には限りがあります。また個人で習得した技術を教えることも、簡単ではありません。それらの問題を解決したいという思いがあり、最終的に行き着いたのがこのシステム開発でした。

―活用について。

 通常、外科医は患者さんの体内を自分の目で解剖学的に認識し、手術します。ところが、患者さんによっては患部付近に脂肪が多く付いていたり、癒着や炎症が起きていたりするなど、人間の視覚では患部を容易に識別しにくい場合もあります。そのような場合、見誤って付近の組織を損傷させてしまうこともまったくないとは言い切れません。また、人間の認知機能にはどうしても限界があります。

 このような限界をクリアするためにはその場で人間が認知できる以上の情報を得て活用することが必要です。その点、ディープラーニングさせたAIによる支援があれば、正確でより安全性の高い手術が行えます。

 また、AIによるナビゲーションシステムがあれば、若手の医師がより早く、高い技術を身に付けることができるというメリットがあります。外科医として一人前になるまでにはある程度の期間が必要です。しかし、ビッグデータを基に豊富な情報を持つシステムの支援があれば、上達するまでの期間を短くすることができるでしょう。

―今後の可能性について。

 術中にランドマークを表示させるだけでなく、患者さんの情報も組み込めるようにしたいと考えています。病歴や傷の治りやすさといった情報です。手術中に使う器具の選択も的確にできるようにしたいですね。私たちはこのような手術方法を「インフォメーション・ナビゲーション・サージェリー」と名付け、開発を続けていく予定です。

 これからもっとAIを用いた技術などが発達することで、あらゆる可能性が出てくると思います。ただし、人間あっての機械。すべて、人に取って代われるものではありません。機械を活用して、より質の高い医療を提供すること。これが、これからの外科医の役割だと思っています。

大分大学医学部 消化器・小児外科学講座
大分県由布市挾間町医大ケ丘1―1
☎097―586―5843
http://www.surgery1.med.oita-u.ac.jp/

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