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2020年重粒子線治療開始 地域一丸となって稼働へ

2020年重粒子線治療開始 地域一丸となって稼働へ

 根本 建二 (ねもと・けんじ)
1982年東北大学医学部卒業。同放射線腫瘍学分野助教授などを経て、
2006年山形大学放射線腫瘍学講座教授。2016年から同病院長を兼務。


 山形大学医学部は2020年8月の治療開始を目指して、東北・北海道地区としては初めての重粒子線治療施設の建設を進めている。根本建二病院長は設置計画に当初から関わってきた一人。開設はいよいよ来年に迫った。

―山形大学医学部の重粒子線治療施設の特徴は。

 本学では2004年から設置計画を進めてきました。がん患者が増加する中で東北・北海道地区にはこれまで重粒子線治療施設がありませんでした。

 重粒子線によるがん治療の大きな特徴は、体への負担が少なく、高い治療効果が得られることです。陽子線に比べ照射回数が少なくて済みますので経済的な負担も減ります。

 炭素の原子核である重粒子(炭素イオン)を炭素イオン線として、体の外から体内の腫瘍に照射しますが炭素イオン線は体内で広がりにくい。つまり深さや腫瘍の形に合わせて範囲をコントロールしやすいため、ピンポイントで腫瘍を照射することができます。

 照射を実施する治療室は2室です。患者さんの体を照射する角度に合わせて固定した上でビームを当てる「水平固定室」。前立腺がんが中心です。もう1室が回転ガントリーを使った治療室。こちらは360度、どの角度からでも照射が可能な「次世代型」装置。重粒子線治療では画期的です。

 塗り絵のように腫瘍全体を照射するスキャニング照射も特徴です。従来の重粒子線治療では患者さん専用のコリメーターという型を作る必要があり作成に1週間ほどかかっていました。しかしスキャニング照射では、そのような型を作る必要はありませんので、受診から治療開始までの時間が大幅に削減できます。建屋の小型化も特徴の一つ。加速器と照射室を重ねて配置することでこれまでのような広い敷地は必要ありません。

 このため治療施設を病院敷地内に建設することができ、両施設は廊下で直結。患者さんの移動による負担は軽減。医療者にとってもスタッフ間の連携が取りやすくなるなどメリットがあります。


―施設完成の波及効果などについては。

  建設計画をけん引されてきた次世代型重粒子線装置研究開発室の嘉山孝正室長は、医学部の学生を本学に残すためには、病院の柱となる施設が必要だということを常に訴えられてきました。

 つまり、最先端の重粒子線施設を持つことは、大学のブランディングに貢献し、山形県、ひいては東北の医師確保に貢献すると考えています。放射線科の医師は稼働時には10人程度になり、重粒子線治療に欠かせない医学物理士も4人配置します。

 また、重粒子線施設建設の条件として、地域連携は課題でした。そこで、3年前、東北を中心に65カ所の病院をネットワーク化。当院と互いに電子カルテを見ながらテレビ会議で話し合うことができます。当院に足を運ばなくとも、地域の病院で、重粒子線治療の適応かどうかを相談できるような仕組みとなりました。

 地域住民の期待も大きく企業や個人から多額の寄付をいただきました。「自分たちや家族ががんになった時、地域に重粒子線施設があれば安心」という声をかけてもらいました。


―今後の抱負を。

 山形大は2007年、国内でもいち早く「キャンサートリートメントボード」を取り入れ、10数年の間に約6000人の治療方針を多職種で話し合ってきました。従来のように、特定の診療科や医師が単独で治療方針を決めるのではなく、病院が責任を持って治療方針を提案し患者さんとともに考える文化が醸成されてきたと自負しています。

 その文化を基に私たちは重粒子線治療という新たな治療の選択肢を提供します。病院理念である「人間性豊かな信頼の医療」の実践に向けて一丸となって精進します。


山形大学医学部附属病院
山形市飯田西2─2─2
☎023─633─1122(代表)
http://www1.id.yamagata-u.ac.jp/MIDINFO/

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