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魚鱗癬の病態解明で治療法確立目指す

魚鱗癬の病態解明で治療法確立目指す

筑波大学医学医療系皮膚科
教授(のむら・としふみ)

2002年北海道大学医学部卒業。
英ダンディー大学研究員、北海道大学病院皮膚科講師などを経て、2020年から現職。

 2020年11月、筑波大学医学医療系皮膚科の教授に就任した乃村俊史氏。43歳の新たなリーダーは、角化症の一種で難病の「先天性魚鱗癬(ぎょりんせん)」など遺伝性皮膚疾患の治療法確立を目指し、研究室を率いていく。

「皮膚科はロマン」恩師の言葉で皮膚科医に

 恩師との出会いが、皮膚科医を志すきっかけになった。医学部に入った時は、外科や内科医に憧れる大半の同級生たちと同様、皮膚科への関心は薄かった。

 4年生の時、清水宏氏(現:北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室名誉教授)が慶應義塾大学から北海道大学皮膚科に教授として就任。清水氏は、医学生時代にアマゾン川流域に数カ月滞在し、現地で激しい皮膚病に苦しむ人たちの姿を目の当たりにして皮膚科医を目指したことを講義で熱っぽく語った。

 疾患をダイレクトに肉眼で見て、その病変の中で何が起きているのか考察できる―。国際的な視点も交えながら皮膚科の醍醐味や魅力を教えてくれ、単調に感じてしまう他の講義とは比べものにならないほど刺激的な時間だった。「皮膚科は医学のロマンだ。私の教室に入ったら世界で5本の指に入るくらいの皮膚科医に育てる」。夢にあふれた言葉で、目指す道が定まった。

根治療法届ける当事者の声が原動力

 教室では、皮膚免疫やアレルギー、遺伝性皮膚疾患の研究に取り組む。特に力を入れるのは、「魚鱗癬」の病態解明と治療法の確立だ。先天性の魚鱗癬は、皮膚の角質が厚くなって魚のうろこのようになる病気で、角質の遺伝子異常で発症。新生児、乳幼児期に死亡するケースもあり、多くの症例で生涯にわたり症状が続く。

 根治療法はなく、現状では水分を補う保湿剤やビタミンAが含まれた薬剤などを用いた対症療法にとどまる。治療の最終的なゴールは発症の原因である遺伝子異常をなくすことで、世界中で研究が進むが、「根治的治療法の実現を目指しつつ、今まさに目の前で苦しんでいる患者さんを助けたい。例えばすでに他疾患で認可されている薬剤を、病態に基づいてリポジショニングするような『現実的な治療法』の開発も目指さなければなりません」と見据える。

 研究の原動力は、見た目や「うつる病気」などの周囲の誤った認識に苦しんでいる当事者の切実な声。毎年福岡県で開催される患者や家族らの会合に足を運び、直接耳を傾けてきた。「患者さんたちの『なんとか早く治療してください』という声が支えです」

心の痛み分かる医師育成 人間性も育てたい

 近年、どの遺伝子に異常があれば魚鱗癬を発症するのか、メカニズム面の解明が進む。「ここ20年で原因はつかめてきた。次の20年は治療の時代」と、魚鱗癬と同様に力を入れる掌蹠(しょうせき)角化症も含め、病態に即した新しい治療法の確立に日夜取り組む。

 大学院生時代、清水氏から「明日から勉強して来て」と突然の「指令」を受けて渡った英国の大学では、分子生物学を学んだ。毎日仕事終わりには、「教室」を「パブ」に移して、ボスとの雑談から遺伝病の基本を叩き込まれた。この時に身につけた知識が現在の遺伝性皮膚疾患の研究に役立っている。

 魚鱗癬の一つの尋常性魚鱗癬は日本人の1割が罹患しているとされる。清潔志向の高まりなどを背景にアトピー性皮膚炎の患者も増え、皮膚科が果たすべき役割の大きさも感じている。

 教室の若手には、「心の痛みが分かる人間性のある医師になってほしい」との思いを胸に指導に当たっている。そしてかつての自分のように、ロマンを感じてもらえるくらい皮膚科の面白さを伝えていくつもりだ。

筑波大学医学医療系皮膚科
茨城県つくば市天王台1ー1ー1 ☎️029ー853ー3900(代表)
https://dermatology-tsukuba.org/

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