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高齢で多元化する病気に連携で立ち向かっていく

高齢で多元化する病気に連携で立ち向かっていく

島根大学医学部 内科学講座 呼吸器・臨床腫瘍学 礒部 威 教授(いそべ・たけし)
1986年広島大学医学部卒業。広島大学医学部第二内科助手、
米MDアンダーソンがんセンター、島根大学医学部内科学講座助教授などを経て、
2008年から現職。

 米国のアンダーソンがんセンター留学後、島根大学に招かれて呼吸器医療に先鞭をつけた礒部威教授。道を切り開いた教授に講座の特徴や山陰ならではの課題、今後着手したいテーマなどを聞いた。

―講座の特徴を。

 私はずっと広島で活動していたのですが、米国留学後にこちらにやって来ました。当時、呼吸器を専門にしている先生はおらず、まさにゼロからのスタート。広島から助けを借りて、2人でベッド2床から始めました。

 専門医の育成をしながら徐々に体制が整ってきたところで、現在の「呼吸器・臨床腫瘍学」へと内外から分かりやすいように名前を変えました。

 現在は15人のメンバー、34床となり島根県内でもトップクラスの専門医の多い病院の一つになりました。診断や治療の技術も順調に進歩しています。

 診断に関しては気管支鏡が大事になってくるのですが、この呼吸器内視鏡の権威で高度な技術を持った栗本典昭先生が入ってくれたことで、気管支鏡診断が飛躍的に向上しました。カメラと超音波を融合させて診断するもので、患者さんにとって負担も少なく非常にメリットが大きいと感じています。

 島根県は高齢者が多く、都会の病院より10歳から20歳は上です。自身の病気についての理解が難しく、副作用は重く、老老介護で通院も難しいなど障壁も当然多くなりますが、その中でも最適な医療を提供すべく奮闘しています。

 iPadを使って10分で患者さんの機能を評価。事前に機能評価をしっかりした上で、最適な治療方針を決める電子カルテの高齢者機能評価は、その中で生まれました。

―山陰の現状を。

 人口の高齢化とともに病気が多元化してきています。従来は、例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)だったらCOPDに対する治療をしっかりやって、禁煙の指導だったり、ワクチン投与をしたり、リハビリを入れたりと専門的な経過を見てきました。

 ところが現在は、COPDの患者さんが長い経過の中で肺がんや、間質性肺炎、肺気腫やぜんそくといった病気を併せ持つのが当たり前になってきました。さらにそこに、糖尿病や高血圧、脳卒中といった生活習慣病も加わります。

 一つの病気だけを見るのではなくトータルケアの時代が来ています。そうした視点で病気を診ることができる医師の育成が急務です。

―今後の展望を。

 がん化学療法については、血栓塞栓症が世界的にも注目されています。この分野は津端由佳里先生を中心に3年前に着手。肺がん患者さん1000例をもとに血栓塞栓症発症率の研究「Rising―VTE STUDY」という形で結実しています。

 多くの人が注目する領域を早くやることは、私たちのような小さい組織には大事なことです。高齢者機能評価もそうですね。まだ人が手掛けておらず、将来性があり、背伸びをしなくても計画を立てればやれることをやっていこうとスタッフには伝えています。

 肺がんはゲノム医療の時代に入っています。組織を採り、病理診断と遺伝子診断をして外科手術や放射線治療をし、全体を薬物療法専門医が統括する。これを専門医がいない島根の過疎地で行うことは不可能でしょう。でも連携することで、地域でできることもあります。

 少ない専門医が何をすれば本当の地域貢献ができるのか。医者の派遣、地域医療を守るといった意見もありますが、時代と地域のニーズをしっかり捉えて何をすべきなのか。これはどの領域もそうだと思いますが、本当に必要とされる地域医療とは何なのかについて真剣に議論したい。これを次のテーマに据えたいと考えています。

島根大学医学部 内科学講座 呼吸器・臨床腫瘍学
島根県出雲市塩冶町89―1
☎0853―23―2111(代表)
https://shimane-u-pulmonary-oncology.jp/

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