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高度で安全な胸腔鏡手術に取り組む

高度で安全な胸腔鏡手術に取り組む

東京女子医科大学医学部  呼吸器外科学講座  教授・講座主任(かんざき・まさと)
1993年東海大学医学部卒業、東京女子医科大学第一外科入局。
東京都立府中病院、東京女子医科大学第一外科准教授などを経て、2017年から現職。

 東京女子医科大学の呼吸器外科学講座が扱う疾患は、肺がん、転移性肺腫瘍、縦隔疾患、気胸・嚢胞性肺疾患など。多くを胸腔鏡手術で行い、実績も豊富だ。ロボット支援下手術も導入し、100例超を経験している。

―教室の特色について。

 当科では、1990年代から胸腔鏡手術を積極的に取り入れています。当時はまだ開胸手術が中心でしたが、2000年代に入り鏡視下手術が急速に進歩したことや、高齢患者が増え低侵襲手術が求められるようになった背景などから、当科でも胸腔鏡手術が占める割合が増えてきました。

 現在は、全手術症例の約9割を胸腔鏡手術で実施。肺がんの標準手術である肺葉切除や、縮小手術の部分切除や区域切除も、適応があれば胸腔鏡下で行っています。

 胸腔鏡手術は、開胸手術に比べて手術創が小さく、術後の痛みも軽く、回復が早いといったメリットがあります。80歳を超える高齢者や合併症を有する患者さんにも施行できるという利点があることから、今後も胸腔鏡手術数は増えていくと思われます。

―技術の習得について。

 胸腔鏡手術は繊細な手技が要求されます。当科が最も重視しているのは、安全性です。若い医師への教育においても、安全に手術を終えることができる技術の習得が最優先となります。

 胸腔鏡手術は、標準開胸手術の経験を十分に積んだ上で習得するのが理想的です。肺の基本解剖を理解しやすいこと、また手術中に何か問題が起きたときには、開胸手術へと転換する必要が生じるからで、私の時代はまさにそうでした。しかし、胸腔鏡手術が成熟した現代に医師となった若手は、そうした経験を積む機会が少なくなっているのが現実です。

 当科では、独自に開発・運用するソフト「CTTRY」を使って、個々の症例の胸部CT画像から三次元肺構築モデルを作製しています。作製者は、構築過程を通して肺の基本解剖を理解でき、さらには術前カンファレンスでシミュレーションをすることで、胸腔鏡手術をイメージできます。

 また、このモデル作製は、研修医や専門医認定前の医師の読影の勉強にも有用です。さらには、外科に興味のある医学生の教育に用いるなど、さまざまな活用方法があります。

 私が医師になったばかりの時代と現在とでは、技術習得のアプローチは異なりますが、到達目標は同じです。患者さんが安心して質の高い医療を受けられることが、私たちの目指すところです。

―現在、取り組んでいることは。

 当科では、2012年にロボット支援下手術を導入。呼吸器外科の分野では2018年から、縦隔腫瘍、肺がんに対するロボット支援下手術が保険収載となり、今後、当科でも手術数が増えると思われます。

 また、2018年10月には、ダ・ビンチの製造販売元であるサージカル社より、当院が呼吸器外科領域の手術見学施設(メンターサイト)として認定されました。当院のロボット支援下手術に関わるスタッフのモチベ ーションの向上につながっています。

 ロボット支援下手術は、従来の胸腔鏡手術よりも精緻な操作が可能であり、より低侵襲な手術が期待できます。手術時間は従来よりも少し長くかかっていますが、これは私たちが経験を重ねることで解消されるでしょう。ロボット支援下手術を受けた患者さんからは、術後の痛みがほとんどないといった感想をいただいており、有用性を実感しています。

 当科がいち早くロボット支援下手術を導入できたのは、それまでの胸腔鏡手術による豊富な経験によって安全性が担保されていたことが大きな要因でもあります。今後も、患者さんに安全な医療を提供できるよう、診療、教育、研究を進めていきたいと考えています。


東京女子医科大学医学部  呼吸器外科学講座
東京都新宿区河田町8―1
☎03―3353―8111(大代表)
http://www.twmu.ac.jp/CHI/

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