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高まるネット・ゲーム依存リスク 多機関連携での対策を

高まるネット・ゲーム依存リスク 多機関連携での対策を

神戸大学大学院 医学研究科精神医学分野
曽良 一郎 教授(そら・いちろう)

1982年岡山大学医学部卒業。
米国立衛生研究所附属薬物依存研究所分子神経生物学研究部門客員研究員・室長、
東北大学大学院医学系研究科精神・神経生物学分野教授などを経て、2013年から現職。

 情報通信技術の発達で問題化してきた、長時間のインターネット、ゲームの使用による依存症。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い家で過ごす時間が増えた今、依存へのリスクは高まる。神戸大学大学院医学研究科精神医学分野の曽良一郎教授に現状と対策を聞いた。

―ネット・ゲーム依存に至るメカニズムや治療は。

 依存症は覚醒剤やアルコール、タバコなどの「物質依存」と、ギャンブルやセックスなどの「非物質依存」に大別されます。ネット・ゲーム依存は後者。正式にはインターネット・ゲーム障害と呼びます。

 すべての依存症は、「楽しいこと」の快感や刺激が繰り返されることで脳内の神経回路が変化し、元に戻らなくなって起きます。ネット・ゲーム利用や飲酒を「ほどほどにしておく」ことができなくなり、その状況が長期間続いて社会生活に支障を来すようになります。

 治療のための特効薬はありません。これは、すべての依存症に共通します。治療は行動そのものに働きかけていくことになります。

 ただ、インターネットは薬物などと違い、生活に欠かせないツールです。ネット・ゲーム使用を「断つ」のではなく、「適切に使用」できるようになることを目指します。そのためには、インターネットやゲームに代わる「楽しいこと」を見つけるのが効果的。うつ病などの併存疾患がある場合は、それに対応する薬を適宜使いながら進めます。

―ネット・ゲーム依存の現場は。

 一般的に、まだそれほど「疾患」として捉えられていないものの、専門家の間での認識は広がっています。米国精神医学会の診断基準であるDSMでは、2013年に初めて疾患として位置付けられました。

 (WHO)は、2019年6月に「ゲーム障害」を国際疾病として正式承認。「ゲームをする時間などを自分でコントロールできない」「ゲーム以外の出来事や関心事の優先度が低くなる」「日常生活に支障を来してもゲームを優先する」。こうした状況が12カ月以上続けばインターネット・ゲーム障害、と定義しました。国内では100万人以上が、治療を必要とするネット・ゲーム依存だと推測されています。

―取り組みについて。

 2018年5月、附属病院の精神科神経科に「ネット・ゲーム依存・ギャンブル依存外来」を新設しました。精神科医、臨床心理士、ケースワーカーなど計約10人体制の専門外来は、全国でも珍しい存在です。

 2020年2月には、附属病院と兵庫県警少年課との間で連携協定を締結。ネット・ゲーム依存が要因とみられる相談を受けた県警が、当事者の少年や保護者らに受診を促し、早期の診療や治療につなげる全国初の試みです。受診数は思っていたより多くて驚いています。

 若者の健全な成長を支える公益財団法人「兵庫県青少年本部」の活動にも参画しています。2019年からは、ネットとの付き合い方を見直したい青少年を対象にした、同本部主催の「オフラインキャンプ」をサポート。コロナ禍による行動制限が、ネット・ゲームを含む精神疾患にどう影響するかの調査研究も、取り組みたいと考えています。

―対策に向けた課題は。

 ネットやゲームへの依存は、若い世代で問題となっています。ゲームをするのは家庭でも、学校や社会にも影響を及ぼします。

 100万人以上とされるネット・ゲーム依存ですが、移行するリスクが高い「予備軍」がさらに多くいると考えられます。オンライン学習やコミュニケーションの円滑化などネットがもたらす有益な要素を生かしつつ、依存予防をどう進めるか。それには家庭、行政、教育機関、医療機関が連携して取り組む必要があります。

神戸大学大学院 医学研究科精神医学分野
神戸市中央区楠町7―5―1
☎078―382―5111(大代表)
https://www.med.kobe-u.ac.jp/psyneu/

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