九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

高い専門性を発揮し安芸津の医療の灯保つ

高い専門性を発揮し安芸津の医療の灯保つ


院長(ごとう・としひこ)

1988年埼玉医科大学医学部卒業。県立広島病院、中電病院、
県立安芸津病院副院長などを経て、2019年から現職。

 農業や漁業が盛んな東広島市安芸津町で、町内外の地域医療を支える県立安芸津病院。2019年4月に就任した後藤俊彦院長は長年、同病院の看板の一つである人工関節置換術の中心的役割を担ってきた。地域の患者に愛され、選ばれる病院づくりに向けた意気込みは熱い。

にぎやかな一曲で顔が見える関係に

 院長室の一角にさりげなく置かれたギター。院内の医師や看護師たちと組むバンドで使うのだという。地域の祭りや健康づくりのための市民公開講座の場で、にぎやかに一曲奏でるのが恒例だ。「地元のみなさんと病院外でふれ合える良い機会。医師として一番大切にしている『顔が見える医療』にもつながればと思い、積極的に外へ出て行っています」と力を込める。

 下肢の人工関節を専門とする。2000年に県立安芸津病院に赴任して以降、手がけた人工関節置換術は通算で千件を超えた。歩けずにストレッチャーで入院してきた人が自力で歩いて退院していく姿は、何度見てもうれしさがこみ上げる。祭りで演奏した際、両脚への人工関節の手術を施した患者が「先生!」と元気に駆け寄ってきたこともあった。「医者冥利に尽きる、忘れられない出来事です」

 東広島市のお隣、呉市の出身。祖父の代から呉市内で外科を開業していた。「あんた、医者になるんよ」。幼い頃から親たちに言われ、医者を志すことに疑いを持つことはなかった。「ギターを始めてからは『ポール・マッカートニーになりたい』と思った時期もありましたけどね」と笑顔で振り返る。

 兄が外科医の道に進んだため、自身は整形外科を選んだ。埼玉医科大学での学生時代、人工関節はまだ世界的にも成績が芳しくなかったという。ただ、大学での講義を聴き、「すごいものだ」と強い興味を抱いた。

地域医療の充実を図る「アウトリーチ」

 医師となって10年目あたりから、国内の人工関節手術件数が急速に増え始めた。自身もその領域に身を投じた。

 ライフワークとして携わることになった人工関節。地域性とも合っていると言う。安芸津町は東広島市で唯一、海に面する。カキ養殖を中心にした漁業に加え、特産のジャガイモなどの農業も盛んだ。

 「激しい力仕事に長年精を出した結果、末期の変形性関節症で来院する高齢者が多い。関節を温存する治療の対象となるような若い患者さんは、ほとんど来られません」。80代の患者の多くも術後はまた、力仕事に復帰していくという。

 12の診療科、一般病床69床、地域包括ケア病床29床を備え、隣接する呉市安浦町や竹原市、離島の大崎上島町の医療も支える。ただ、眼科や婦人科など、常勤医師がおらず、総合病院が集まる東広島市中心部などに患者が流れがちな側面は否めない。

 「まずは私たち医師が力を発揮することが重要。長く通い続けてくれる患者さんを大切にしたい」と後藤院長。内視鏡の専門医が複数いる「内視鏡ステーション」の検査件数も年約1600件と実績を重ねている。自身についても「人工関節の手術に都会か田舎かは関係ない。誠心誠意、診させてもらい、結果を蓄積するしかありません」と語る。

 一方で、自ら通院できない患者らにも医療を提供することを重要な役割と考え、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリといった病院から出向いていく「アウトリーチ」にも力を入れている。10月からは後藤院長が行う診療応援も再開した。 これは整形外科がない病院へ後藤院長が赴き、診療する。交通手段の問題などで遠方の病院へ行けない患者を診療するのに加え、手術などが必要な重症患者は県立安芸津病院への入院治療につなげる。「地域の皆さんに質の高い医療を提供できるよう、さまざまなことに取り組みたい。安芸津の地域医療を担い続けるために」

県立安芸津病院
広島県東広島市安芸津町三津4388 ☎0846-45-0055(代表)
http://www.hpakitu.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram has returned invalid data.

コメントはこちらから

メニューを閉じる