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食道がん治療に光明 ウイルス製剤「テロメライシン」

食道がん治療に光明 ウイルス製剤「テロメライシン」

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器外科学
藤原 俊義 教授(ふじわら・としよし)

1985年岡山大学医学部卒業、同大学院医学研究科第一外科学講座。
米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、
岡山大学病院遺伝子・細胞治療センター准教授などを経て、2010年から現職。


 藤原俊義教授の研究グループが進めてきた、食道がんに対する放射線併用「」ウイルス療法の臨床研究が終了。安全性と有効性が確認でき、企業治験も進む。アメリカでの学会発表にも注目が集まった。その前途に広がる可能性は。

―2002年から取り組んできた研究の成果が出ました。概要と今後の展開は。

 テロメライシンは、風邪ウイルスの一種であるアデノウイルスをもとに開発した抗がんウイルス製剤。がん細胞を殺傷するとともに放射線に対する感受性を増強する特長があります。

 2013年から食道がん患者を対象にテロメライシン投与と放射線治療を併用する臨床実験を実施。評価可能な12例中11例で腫瘍縮小が認められました。客観的奏効率は91・7%。ステージ1では83・3%、ステージ2・3では60・0%で臨床的完全寛解(cCR)がみられました。

 放射線治療のみを受けた症例のcCR(ステージ1で56・7%、ステージ2・3で26・8%)に比べ、テロメライシンの上乗せ効果があると認められた。予想以上に効いたなという思いです。

 研究を推進するため、2004年に立ち上げた大学発バイオベンチャーが「」。一昨年からは、臨床研究と並行して、企業治験もすでに進んでおり、フェーズ1の6例中5例が登録終了。残るはあと1例です。その後、フェーズ2として国内十数施設で30数例の試験を実施予定。その結果をもって、早期承認につなげたいと思っています。


―新薬がもたらす可能性は。

 食道がん治療の標準治療は、あくまで手術や化学療法。ただ高齢者や併存疾患がある人など、適用できない患者さんへの放射線治療において、テロメライシンを併用することで効果が期待できます。

 局所だけではなくウイルスが流れていくリンパ節転移までは効く治療法ですが、さらに動物実験ではウイルス投与で免疫が活性化することが分かっています。

 今、国立がん研究センター東病院では、テロメライシンと抗PD―1抗体薬の併用療法について医師主導治験を行っています。免疫チェックポイント阻害薬との併用で効果があれば、離れたところに腫瘍があっても適用になるかもしれません。


―ここに到達するまで、一番苦労したことは。

 やはり資金の問題です。ベンチャーを立ち上げたことで、アメリカで最初の試験を行うことができたものの、リーマンショックで資金調達が難航。数年間、止まったままで、もどかしかったですね。

 その後、2013年に厚生労働科学研究費に採択され、日本で臨床研究をスタートすることができた。そのデータをもとに、体力が戻ったオンコリスバイオファーマ社と治験を始められたので、タイミングよく流れに乗れたなと感じています。

 悪性黒色腫に対するヘルペスウイルス治療薬がウイルス治療薬として初めて欧米で承認されたことも追い風です。ウイルスを局所に投与する方法は大手製薬メーカーにはあまりなじみがなかったのですが、こういう方法もあるんだと企業の注目が集まり始めたようです。

 流行の分子標的薬にしても、マウスの抗体がヒトに使えるなんて誰も思っていなかった。ところが乳がんの抗HER2薬が出ると、次々に抗体医薬品が出てきた。ゲノムもそう。何か一つのブレイクスルーが、それをきっかけに現場を大きく変えます。私たちの研究も最初は注目されませんでしたが、やっとここまでこられたという心境です。

 人生100年時代。長生きする人が増える中で、同年代でも個人差はますます広がります。そういう意味では、各人に合う治療の選択肢を増やすことが重要になる。テロメライシンがその一つになれば、と願っています。


岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学
岡山市北区鹿田町2―5―1
☎086―223―7151(代表)
http://www.ges-okayama-u.com/

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