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大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 頭頸部がんの低侵襲治療の実現に向けて

大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 頭頸部がんの低侵襲治療の実現に向けて

猪原 秀典 教授(いのはら ・ひでのり)
1987年大阪大学医学部卒業。米ミシガン キャンサー ファウンデー
ション、大阪大学医学部耳鼻咽喉科講師、独立行政法人医薬基盤
研究所客員研究員などを経て、2009年から現職。

 110余年の伝統を持つ大阪大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学。150人超の医局員を擁し、耳、鼻、音声・(えんげ)、頭頸部腫瘍の4領域をカバーする。猪原秀典氏は「変革と躍進」を掲げ運営に当たる。


―専門である頭頸部がんについて。

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの原因として知られていますが、実は中咽頭がんの原因としても注目されており、日本では中咽頭がんの半数以上が、HPVが原因になっています。放射線や抗がん剤による化学放射線療法によく反応し、喫煙や飲酒が原因のがんに比べて、予後が良いことが特徴です。

 化学放射線療法の効果は確かに高いのですが、予後が良好で長生きする患者さんにとってQOLの低下は避けられません。そこでQOLが上がるよう、放射線診療科のご協力をいただき、放射線治療のみや抗がん剤の量を減らすといった低侵襲治療の開発のための臨床試験を行っています。多くの患者さんが低侵襲治療で治りますが、問題はそうした患者さんを正確に抽出する方法です。

 そこで今、進めているのがバイオマーカーの開発です。血液中に放出されたHPVのDNAを検出することで、低侵襲治療で治る人をほぼ100%拾うことができます。極めて精度が高く、この開発で今、世界としのぎを削っているところです。できれば数年後に製品化し、臨床ベースに乗せたいと考えています。

 頭頸部がんでは、世界に先駆けて始まった光免疫療法「イルミノックス」に注目しています。これは患者さんに光感受性物質を注射して、がん表面に発現するEGFR(上皮成長因子受容体)に結合させ、レーザーを当てて細胞を死滅させる治療法です。他に方法がないなど適用が限られますが、いずれ早期がんにも使われるようになるでしょう。当科でも準備を進めています。


―その他の領域は。

 耳では、人工内耳の埋め込み手術を多数手掛けています。また、メニエール症候群の中から真のメニエールと診断する方法も研究しています。めまい時に起きる眼振を自宅で計測できる機械を開発。これにより眼振データを集約し、さらに頭部MRIで内リンパ水腫の有無を確認できれば、真のメニエールと診断できます。並行してゲノム解析も進めており、遺伝的特徴も探っています。

 鼻の領域では、鼻腔(びくう)内の悪性腫瘍に対する内視鏡手術は、強みの一つと言えます。指定難病である好酸球性副鼻腔炎の治療にも実績があり、本学は免疫学が強いので、関連研究室と連携して研究を進めています。


―今後は。
 
 医局には、毎年10人ほどが入局しています。ホームページは、医局らしくないカラフルなイラストが目を引くと思いますが、分かりやすく、医局の現状を「見える化」し、SNSも活用して若い人にアプローチしています。

 人材育成では、多様性を重視。女性医師の活躍も目覚ましく、例えば関連病院の部長は3割近くが女性、医局長も女性です。近年は、研修期間を終えて早い時期に結婚・出産に至る医局員が増えており、われわれもキャリア継続のための支援に力を入れています。

 厚生労働省に医局員を常時派遣しており、耳鼻咽喉科では珍しいと思います。できれば、PMDA(医薬品医療機器総合機構)やAMED(日本医療研究開発機構)にも人材を派遣して、HPV要因による中咽頭がんの啓発や日本が抱える難聴の問題解決につなげていきたいと考えています。

 加齢性の難聴は認知症に直結しており、行政も解決に動き始めています。難聴は今や大きな問題になってきており、耳鼻科医がきちんと診断し、補聴器を含め正しい治療ができるよう、行政機関と一緒に取り組んでいければと思います。



●大阪大学大学院医学系研究科
 大阪府吹田市山田丘2―2 ☎06―6879―5111(代表)
 https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ent/

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