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領域の枠組みを越え多機能な外科医を育てる

領域の枠組みを越え多機能な外科医を育てる


教授(かつまた・たかひろ)

1988年金沢大学医学部卒業。京都桂病院心臓血管センター外科部長などを経て、
2004年から現職。大阪医科大学附属病院副病院長兼任。

 心臓血管外科と呼吸器外科を2本柱とする大阪医科大学外科学講座胸部外科学教室。臓器別に専門特化していく医療界の中で、多様で多機能な診療と人材育成を強みとする講座の特徴を、勝間田敬弘教授に聞いた。

―講座の概要と特徴は。

 胸部外科は「みぞおちから上。首から下」の臓器を扱う領域。臓器別に細分化されている今、「胸部」でくくる大学や医療機関は少ないでしょう。

 私たちの教室は、第二外科学教室として1954年に開設されました。今は心臓血管外科と呼吸器外科の二つの柱があります。

 心臓血管外科は、開設翌年の1955年に狭心症患者への心膜癒着術が初の手術症例です。1961年に、患者を低体温にして心臓を止めた状態での手術を実施しました。心臓ペースメーカーの埋め込み手術も1966年に開始。心臓血管外科の黎明(れいめい)期ともいえる当時から開心手術を数多く手掛け、最新医療に挑んできました。小児の先天性心疾患も含めた全体の手術件数は、年間300~400例となっています。

 呼吸器外科は、本教室のルーツ。開設の年に、教室初の手術として結核患者の肺葉切除を行いました。その後、胸腔鏡手術を取り入れ、2019年にはロボット支援下手術を導入。現在、年間300~400件の手術を手掛けており、そのほぼ半数は原発性肺がんです。

―研究について。

 基礎研究に注力しています。中でも、胸部外科の手術で使われる生体材料、人工臓器の開発は大きな柱です。例えば、子どもの心臓の壁に空いた穴を閉じるためのパッチ。患者の細胞に置き換わっていくような、「生体親和性」に優れたパッチや人工血管などの人工素材開発に取り組んでいます。

 一連の研究は、先天性心疾患を専門とする根本慎太郎・専門教授を中心に産学連携で進めており、既に実用化に向けた臨床試験の段階のものもあります。

 呼吸器外科系では、早期肺がんの研究が活発です。早期肺がんは、肺の中に良い細胞と悪い細胞がすりガラスのように入り交じっているため、病変を手術できちんと取り除くことが難しい。そこで、がん細胞密度の低い病変を手術直前にマーキングできる特殊な手法の開発に取り組んでいます。

 基礎研究は、とかく膨大な手術症例の陰でおろそかにされがちですが、「すべての研究は、患者のための臨床に還元されなければならない」とのモットーの下で精力的に進めています。

―医師育成の方針は。

 心臓も心臓血管も治療できる、血管内治療も血管外からのアプローチもできる。肺も心臓も扱える、小児も成人も診られる、いわば「多機能な外科医」の育成を重視しています。

 臓器別に高度専門分化し、その先もさらに細かく分かれているのが今のトレンド。ただ、そのマイナス面として「狭い領域でしか診療機能を発揮できない外科医」が増えていると感じます。

 臨床では、複数の疾患を併せ持つ患者が大半。「血管のここから先は呼吸器外科」などという境界もありません。専門特化した複数の医師が関わるのではなく、基本的には1人の外科医が治療を完結できる診療が理想だと考えています。

 当教室の心臓血管外科と呼吸器外科の間に壁はなく、まずは外科の専門医を取得し、互いの科の手術に参加したり、解剖を一緒に学んだりしています。

 専門性を高めることは大切です。従来の外科医が備えていた「多機能、多様性」を現代に合う形で担保しつつ、細分化されている複数の専門領域にも分け入って計画的に修練できる環境を整えた教室です。高いレベルで幅広い素養を身に付けた人材こそ、各地の病院で指導的立場になった際、病院全体の医療の安定感に寄与できると思います。

大阪医科大学 外科学講座 胸部外科学教室
大阪府高槻市大学町2―7
☎072―683―1221(代表)
https://www.osaka-med.ac.jp/deps/tho/

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