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震災後の福島を支える新たな教育体制を構築

震災後の福島を支える新たな教育体制を構築

一般財団法人大原記念財団 大原綜合病院
理事長・院長(さとう・かつひこ)

1981年福島県立医科大学医学部卒業。
スウェーデン・ヨテボリ大学留学、福島県立医科大学整形外科学講座、
福島県立会津総合病院院長などを経て2009年大原綜合病院院長、2019年から現職。

 東日本大震災から9年が経過。福島県内の医療事情は、震災の前後で大きく変化した。特に苦慮してきたのが医師の確保。大原綜合病院では、その状況を改善すべく、さまざまな取り組みを推進してきたと言う。

─病院の特徴は。

 当院は、1892年に開院。福島市の中心にあって、駅からのアクセスもいい場所にあります。

 病院建物の老朽化に伴い、2018年、道路を挟んで向かいにあったこの土地に新築移転しました。同じタイミングで、法人内の大原医療センターにあった循環器内科など急性期の機能を当院に移行。救急・急性期医療に特化した総合病院として、新たなスタートを切りました。

 新しい建物は、救急にも力を入れた造りとなっています。救急医療を専門とする医師に、設計段階からアドバイザーとして関わってもらい、ER型の救急に対応するための広い手術センターを設置。屋上にヘリポートを設けてHCU(高度治療室)、手術室、病棟をエレベーターでつなぎ、縦の動線をつくりました。

 実際に運用していても、かなり効率化されたという手応えがあります。救急の受け入れ件数は、2019年でおよそ3400件となっています。

 法人内を見ると、当院が急性期医療を担い、大原医療センターが地域包括ケアと回復期リハビリテーションの部分を担当。清水病院が精神疾患や認知症を対象とする「精神科」を専門としています。法人内で連携し、ほぼすべての患者さんに対応できる体制になっていることも、強みだと言えるでしょう。

─大切にしていることは。

 重要なのは、患者さん一人ひとりを大事にしながら、1人でも多くの患者さんを診ること。地域の方々の要請であり、当院の健全経営にもつながります。

 ただ、実現のためには、医師を確保することが大前提です。そこで、「震災」という一見ネガティブなファクターを強みにし、「福島県で一流の教育ができるように」という目標を持って、総合診療科を中心に全職種が関わる臨床研修をつくり上げてきました。

 さらに、地域全体の教育体制を底上げすべく、市内2カ所の基幹型臨床研修病院とタッグを組んで「福島市臨床研修〝NOW〟プロジェクト」を立ち上げました。「NOW」は、日本赤十字社福島赤十字病院(NISSEKI)の「N」と大原綜合病院(OHARA)の「O」、医療生協わたり病院(WATARI)の「W」を取りました。福島市医師会の協力を得ながら、著名な医師を招いたケーススタディーや講演会、さらにはフェアへの出展などの活動を展開しています。

 医師の確保や育成は、これまで各病院がそれぞれで頑張っていました。しかし、手を組むべき局面では手を組みながら、互いに「良きライバル」として切磋琢磨(せっさたくま)していくことが地域の医療を守ることにつながるのではないでしょうか。今後も、連携を通して地域の研修や医療提供の質を底上げしていけたらと思います。

─今後の目標は。

 総合的な新しい医療を模索したいと思っています。心と体は不可分で、健康を損なうと体だけでなく精神も病んでいくもの。そこでリエゾン精神医学的アプローチを導入して、患者さんの満足度を上げていきたいと考えています。

 また、福島県は残念ながら健康指標が高くありません。健康寿命が全国平均より低く、特定健診でメタボリック症候群に該当した県民の割合は、全国ワースト4位(2017年度)。循環器疾患や脳血管疾患によって亡くなる方の割合も、全国と比較して高くなっています。福島県を健康長寿県にしたい。そのために、予防医学的な啓発活動にも、さらに力を入れる必要があるのではないかと強く感じています。

一般財団法人大原記念財団 大原綜合病院
福島市上町6─1
☎024─526─0300(代表)
http://www.ohara-hp.or.jp/ohara/

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