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間質性肺炎の診療 毒ガス傷害の解明に貢献

間質性肺炎の診療 毒ガス傷害の解明に貢献

医系科学研究科 分子内科学
服部 登 教授(はっとり・のぼる)

1987年京都大学医学部卒業。
福井医科大学(現:福井大学医学部)病理学講座助手、米ミシガン大学留学、
広島大学大学院分子内科学講座准教授などを経て、2017年から現職。
広島大学病院呼吸器内科診療科長、広島大学医学部医学科長兼任。

 前身の組織から70年余りの歴史を刻む広島大学大学院医系科学研究科分子内科学。その教室の中心を担うのが呼吸器内科グループだ。教授として教室をまとめ、広島大学病院呼吸器内科の診療科長も務める服部登教授に、診療や研究、人材育成の展望を聞いた。

―呼吸器内科グループの概要を教えてください。

 内分泌・糖尿病内科グループとともに、分子内科学の教室を構成しています。分子内科学は1948年に、当時の広島県立医科大学で開講した「内科学第2講座」が源流です。時代とともに循環器内科や腎臓内科が独立するなどした過程の中で、「多臓器を分子レベルで診る内科学」という意味合いで名付けられました。

 現在は、大学院生を含めて、全体で60人近くの医局員を要する大所帯となっています。所属する医師のおおむね8割は呼吸器内科という構成です。教室の教授も代々、呼吸器内科が担ってきています。

―呼吸器内科の診療や研究での強みは何ですか。

 難治性の呼吸器疾患全般を高いレベルで診ることができる医師がそろっている点です。

 中でも間質性肺炎は、継続的に力を入れてきた疾患の一つです。間質性肺炎は、検査で「異変」を見つけることは容易ですが、原因の見極めが非常に難しい。薬物、アレルギー、膠原病など、さまざまな可能性が考えられます。なぜ異変が起きているのかが分からないと、正しい治療はできません。

 この難しい疾患に関する顕著な成果は、先代の教授だった河野修興先生のグループ研究です。間質性肺炎患者の血中に増える糖タンパクを発見。「KL―6」と名付けられ、診断薬として国内外の医療現場で実用されています。医局全体で長年培った信頼と実績によって、中四国地方を中心に全国から患者が集まります。

 ほかにも、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ぜんそく、感染症などに強い意欲で取り組む医師たちが教室を支えています。

―広島の歴史と密接に関わってきました。

 毒ガス傷害です。広島県竹原市の大久野島にあった旧日本軍の毒ガス製造工場で働いた元工員たちの健康診断や治療に、広島大学などの呼吸器内科の医師で研究会をつくって取り組んできました。初代教授の時代から続き、途中からは国も費用を負担しました。

 一定期間毒ガスにさらされた人に、どんな健康影響が出るか。先輩たちは手探りで健診と治療に当たり、知見を積み重ねました。対象となる人の病気の早期発見、早期治療につなげたと同時に、毒ガスの長期的影響を解き明かす貴重な研究成果も得られたと思います。イラン・イラク戦争でマスタードガスが使われたイランなど、海外の医師や研究者もよく視察に訪れます。

―今後の展望は。

 呼吸器を診る医師を増やす必要性を、ますます強く感じています。近年は肺がん、肺炎、COPDなどの患者が急増し、さまざまなタイプのぜんそくに苦しむ人も増えています。

 こうした死に直結しかねない病気を診る医師は、全国的に足りない状況。大学病院としての診療レベルの維持はもちろん、教育機関として新しい人材を育て、各地に供給しなければなりません。

 若い呼吸器内科医を育てるには、まず何より、呼吸器内科診療の面白さを伝え、関心を持ってもらうことが効果的です。その点、医療機関での研修が果たす役割は大きいでしょう。

 呼吸器内科診療の現場に触れた研修医が「医師を目指す上で、有益なことを学んだ」「この診療科に興味が持てる」と感じるかどうか。それは、現場の医師たちが魅力ある診療を見せられているかどうかにかかります。その意識の醸成は、これからも大切にしていきます。

広島大学大学院 医系科学研究科 分子内科学
広島市南区霞1―2―3
☎082―257―5555(代表)
https://home.hiroshima-u.ac.jp/naika2/

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